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第33章 命の恩人

「陽菜ちゃん、先生を呼んでくるから、あとで診察しましょうね」


　看護師さんはそう言うと、瀬名さんと一ノ瀬社長に頭を下げて個室から出て行った。


「あの……ご迷惑をかけてしまい……助けてくださり、ありがとうございました」


　私は一ノ瀬社長に御礼を伝えた。すると一ノ瀬社長はフッと口元を緩めたかと思うと、


「君の無事な姿が見れて安心したよ。私のことは気にせず、身体をゆっくり休めてほしい」


　優しい眼差しで私に微笑みかけてくれた。


「ありがとうございます……」


　社長という偉い立場の人なのに、こんな見ず知らずの私の心配をしてくれるなんて……なんて優しい人なんだろう。


「君は高校生かな？」

「はい、高校二年生です……あっ、水嶋陽菜と申します」


　私は慌てて自己紹介をすると、一ノ瀬社長の目が一瞬、大きく見開いたような気がした。


「水嶋……陽菜さんか」

「はい」


　気のせいかな？　


　その時、個室の扉がノックされた。瀬名さんが扉を開けると、お父さんと真人お兄ちゃんが血相変えて部屋の中に飛び込んできた。