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わたしの妄想日誌
第12章 電車の中で
 わたしは高校〇年生です。学校では生徒会活動をしています。自分で言うのもおかしいけど、手っ取り早くイメージしてもらえるように言えば、いわゆる優等生です。成績もかなり上の方だし。

 今朝も通学のために電車に乗っています。いつも文庫本を開いて降りる駅まで読み耽っています。でも今日は違うことをして愉しみます。向かいにいい感じのオジサンが座って、さっきからこっちを見ているような気がするから。

 『気がする』というのは目線を合わせてはいないからです。目線を合わせてしまうと、こちらにも意思があるように思われてしまいそうなので。あくまでもわたしは見られる側、鑑賞される側でいたいのです。

 …というか、目線が合って、わたしにとっての素敵なひとときがぎこちなくなってしまうのがいやなんです。

 『見られる側でいたい』なんて言いましたけど、別にスカートを短くしていたりとか、そういうことは一切していません。どちらかと言えば地味なほうです。膝もぴったりと揃えて、お行儀よく座っています。

 意識は完全にオジサンのほうに集中しちゃってますけど、本を開いたままでは不自然になってしまうので、時々、ページをめくったりする所作を入れたりしています。わたしが心の中でオジサンに何かつぶやこうとしたときにページをめくります。

 『オジサン、時々お見かけしますね。電車に乗るといつもわたしがいるかどうか探してくれてありがとうございます。そして、今朝はわたしの目の前に座ってくれてありがとうございます』

 そんな”ご挨拶”をしてからページをめくります。

 『オジサン、わたしのこと、どういうふうに見えていますか? まじめな女子高校生だと思っていますか? でも、まじめだけじゃないって思ってくれてますよね? そうじゃなかったらわたしのこと探してくれたりしないですものね?』

 『オジサンの思っているとおり、わたしまじめはまじめですけど、まじめだけじゃないんです。頭の中はいつもいやらしいことばかり考えているんです。どうですか? 当たりましたか?』

 オジサンが姿勢をちょっと変えたように思いました。

 『この文庫本だって、かわいいブックカバーかけてますけど、中身は成人小説なんです。エロ小説って言ったほうがわたしは好きです。この前、ゴミの回収場所で見つけて拾ってきちゃいました』
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