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大きなクリの木の下で
第16章 エピローグ

散らかっているとは謙遜したに違いない。
女性らしく華やいだ部屋ではないけれど、余計なモノを置いていなくてサッパリした部屋だった。

「仕事は?復帰できたの?」

「う~ん、まだまだね
でも、今の世の中パソコンがあれば自宅で仕事も出来るし、いい世の中になったものだわ」

「それを聞いて安心したわ」

静香としては自分一人が幸せになっていいものかどうか心を痛めていたのだ。

用事をすべて済ませて帰宅途中で公園のベンチで一休みした。

「ちょっと疲れちゃったわ」

「誰だよ、安定期に入ったから適度な運動で歩いた方がいいって言ったのは」

初夏の日差しが容赦なく襲いかかる。

「あっちのベンチは木陰になっていて涼しそうだよ」

そこだけ敬遠されるように誰もベンチに近寄らない。

「あら?」

「うへぇ!」

そのベンチに誰も近寄らないはずだ。
匂うのだ…それも男性が放出する白い液体と同じ匂い…

「何の匂いかしら?まさかあなた、パンツの中に出しちゃった?」

「バカなことを言うなよ
匂いのもとはこの花だよ、これ、栗の花だ」

「まあ!栗の花ってこんないやらしい匂いがするの?」

「やっぱり元いたベンチに戻ろうか?」

「ううん、匂いの好き嫌いは人それぞれだけど、私はこの匂いが好きよ」

「欲しくなっちゃう?」

「バカなことを言わないの
でも…安定期に入ったから今夜当たり抱いて欲しいわ」

栗の花の香りに欲情してきたのか
静香は竹本の腕に寄りかかって甘えてくる。

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