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大きなクリの木の下で
第11章 薬物依存症の美代子

「彼女に申し訳ないことをしたなあ…」
まだ事件のことを思い出すとあんなに取り乱すとは思ってもみなかったのか、年輩の刑事は自責の念を口にした。
「あなたにも辛い思いをさせてしまったみたいだ」
パトカーに向かう道すがら、
破れたワンピースを気づかって若い刑事は自分のジャケットを脱いで静香の肩に羽織らせてくれた。
再び長時間のドライブをして静香のマンションに到着した頃には陽がすっかり西に傾いていた。
「これ、ありがとうございました」
マンションの前でパトカーを降りるときに
若い刑事が羽織らせてくれたジャケットを脱いで返そうとした。
「それ、お使いになってください
その破れたワンピースじゃ住人の方に見られて陰口を叩かれても困るでしょうし…」
「あ、でも…」
「折を見て返してもらいに来ますよ」
若い刑事とすれば、再び静香に会える口実を作っておきたかった。
「ありがとうございます」
彼の言うように破れたワンピースじゃ、誰かに見られて陰口を広められても困る。
ましてやパトカーから降りてきたのだから尾ひれが付いてあらぬ噂を立てられても困るとおもった。
自分の部屋で一息つくと、疲れがドッと出てきた。
時計を確認して、今から竹本が入院している病院に見舞いに行っても面会時間が終わりを迎えているに決まっている。
『美代子…たいへんだなぁ…』
思っていた以上に事件のことがトラウマになっているみたいで、無二の親友である美代子の今後を心配した。

