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大きなクリの木の下で
第10章 リハビリテーション

「私、竹本さんのリハビリプログラムを変更するわ
病室で行うストレッチを主題に書き換えます。
だから、その…邪魔の入らない病室で…いろいろ教えてくださらない?」
その提案には竹本も大賛成だった。
人の目を遮るカーテンがあるとはいえ、
カーテンの向こう側には大勢の人がいるのだから
竹本自身もそうだが、彼女にしても声も出せないのでは何かと不都合だろう。
「ええ、ぜひ、そのようにしてもらえたら僕も嬉しいです」
そのように約束して、車椅子で病室に戻る時に廊下で日勤の由里子とすれ違う。
「あら、ずいぶんと嬉しそうな顔をしてるじゃない」
車椅子を押して先を急ごうとする村中を制するように
由里子は車椅子の前に回り込みしゃがみこんで竹本の顔を覗き込んだ。
「嬉しそうな顔?
よしてくれよ、リハビリでけっこう体を苛められてきたとこなんだよ」
「そうかしら?理学療法士さん美人だし、楽しくて仕方ないんじゃない?」
そう言って由里子は車椅子を押す村中の顔を見やり
嫉妬交じりの苦々しい表情を浮かべた。
メラメラと女の嫉妬の炎が燃え上がる。
そして竹本の耳に顔を寄せて「週末、また外泊許可を取ってあげるわね」と囁いた。
竹本が「本当ですか?楽しみにしてますね」と返答すると
勝ち誇った顔をして「それじゃ、理学療法士さん、彼のリハビリよろしくね」と、とおせんぼから道を開けてくれた。

