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大きなクリの木の下で
第8章 外泊許可

翌日の面会時間の2時になっても静香は現れなかった。
『俺、なんか気に障るようなことを言ったっけ?』
女心のと秋の空と言うように
つい先日までは甘いムードで交際まっしぐらだと思っていたのに、こうもあからさまに敬遠されているとなると、どこか自分に非があるように思えて仕方ない。
一昨日までは「私、泊まりこみで看病しますから」とまで言ってくれていたのに…
「あ~あ…静香さんに会いたいな…」
そんな独り言が言い終わらぬ打ちに病室のドアがコンコンとノックされた。
『来てくれた!』
そのノックの主がてっきり静香だと思い、
「どうぞ」と入室を促す声がやたらと裏返っていた。
「どう?お変わりありませんか?」
ひょっこりと顔を覗かせて現れたのは
夜勤から日勤シフトへの移行の関係で非番のはずのナースの由里子さんだった。
「あれっ?由里子さん…今日と明日はシフトチェンジの都合で非番なんじゃ?」
「非番よ、だけど非番だからって好きな男の見舞いに病院に来ちゃいけないって法律はないわ」
確かに非番なのだろう。
その証拠に彼女は白衣ではなく薄桃色のワンピース姿だった。
「その洋服、とてもお似合いですよ」
「そう?馬子にも衣装って言いたそうね」
せっかく見舞いに来てあげたんだから、もっと嬉しそうな顔をしなさいよ
そんなことを言いながらも竹本の顔を見れて嬉しいのか、
見舞いに持ってきたカーネーションを花瓶に差し込んだ。

