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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第14章 人界の様子

(赤い痣が、消えている……)

 鬼に吸い付かれて赤くなっていた肌も、いつの間にか元に戻っている。

「なして、あんなとこいた? お前さんの着物、上物だべ?あんた都から逃げてきた姫さんか?」

「…そ、それは」

 女性の質問が畳みかけるように続く。返答に困っていた巫女は、ハッとして聞き返した。

「ここは都(ミヤコ)から近いのですか?」

「ああ、そうだ。馬で半日も走りゃ、都に着くよ」

 巫女の胸に、衝撃が走った。

 大蛇(オロチ)は誓いを守ったのだ。彼女を人界に、しかも都の近くに送り届けた。

(ですが、それはつまり──)

 モノノ怪が人と交わす “ 誓い ” は、基本的に等価交換──彼女が都の近くに送られたということは、大蛇が彼女の身体にそれだけ満足したということ。

 巫女の身体が震え、嫌悪と悔しさが胸を締め付けた。首筋に這った大蛇の指、ヌルリとした蛇の感触、気が狂いそうなほどの快楽の責め苦が……脳裏に蘇る。

「震えとるな、寒いべか?」

 女性は心配そうに巫女を見やり、水の器を渡した。

「悪いが病人にやる薬はねぇ。食いもんもな」

「…っ…いえ、わたしは、問題ありません。ありがとうございます」

 巫女は水を一口含み、冷静さを取り戻した。

 そして彼女は女性の目を見つめ、静かに尋ねる。

「教えてください。この一年で、いったい何が起こったのですか?」

「ああ……」

 女性は目を伏せ、ため息をついた。

「初めは日照りが続いて、作物が育たんくなった。稲は枯れ、川は干上がった。そんで、恐ろしい疫病も広まってな。そんなこんなで生活が苦しくなってった時に、士族(シゾク)のヤツらが都に攻めてきたんだべ」

「……」

「若い娘はみんな、都(ミヤコ)に居座ってる士族のやつらに連れてかれちまった。許せねぇさ」

 巫女の顔が青ざめた。

 鬼の館で見た、連行される人たちの姿が脳裏に焼き付く。

 彼女が境界に囚われていた間に、人界は一変していたのだ。



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