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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第13章 蛇との取り引き

鏡に映る里の光景が、彼女の胸を締め付ける。子どもの泣き声、焼け落ちた家々、連行される人々の絶望的な表情──それらが、彼女の決意を強く揺さぶった。
(急いで帰らなければ…!)
鏡を前に、巫女は選択を迫られた。境界を抜け出し、一刻も早く人界へ戻らなければならない。
その為には──?
抜け出す方法を模索し、彼女が躊躇いを見せた時である
「俺が助けてあげようか?」
「……っ」
背後から、音もなく忍び寄る大蛇(オロチ)の声。湿った、まとわりつくような声が彼女の耳を這った。
彼はゆっくりと近づき、巫女の首筋を指で撫でた。邪悪な笑みを、青白い顔に浮かべて。
「人界へあんたを送ってやる」
「そ、そんな事ができるのですか?」
巫女の声には警戒が滲む。
大蛇は余裕の態度で答えた。
「この境界の結界は、人間の出入りを禁ずるものだ。俺たちモノノ怪には影響しない」
そう話す相手の提案に、巫女は目を細めた。
(このモノノ怪の目的が掴めない)
彼女が疑念を抱いていると、大蛇の指が、彼女の首筋をゆっくりと這う。
「その代わり……あんたの身体を味見させなよ」
「……!?」
その言葉に、巫女の身体が硬直する。彼女は瞬時に身をひるがえし、彼の手から逃れた。

