この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
巫女は鬼の甘檻に囚われる
第13章 蛇との取り引き

恐ろしかった。
「ふざけた事を言わないで!」
「おいおい、喰わせろって意味じゃないぜ?」
大蛇は彼女の反応を可笑しそうに笑った。
同時に、じろりと全身を流し見る。巫女は思わず着物の合わせを掴んだ。
「鬼王が執着してるその身体……遊びたくなるのもわかるだろ?」
「……っ」
穢される。
巫女は即座に逃げ出した。
石階段を駆け上がり、冷たい空気を切り裂くように走る。
「きゃっ…!?」
だが、階段を上りきったところで、足元にヌルリとした感触が絡みつき、彼女はうつ伏せに倒れた。
片足を見ると、銀色の鱗を持つ蛇が巻き付いている。
ズルッ.....
「ひっ…」
「話の途中で逃げるなよ」
ゆっくりと後を追ってきた大蛇が、横たわる彼女の隣に腰を下ろした。
「人界が心配だろう? ちゃんと送り届けてやるから」
「そんな戯言っ…信じられません!」
「ハハハッ、悲しいね。なら誓いを立ててやってもいい」
「誓いを…!?」
大蛇の赤い瞳が、彼女をじっと見つめる。巫女も思わず見つめ返した。
「そんな…っ、本気なのですか?」
「当然だろう。俺たちモノノ怪は嘘をつかない──…人間と違ってな」
「……っ」
巫女の身体が震えた。
悔しさとおぞましさで、涙が頬を伝う。
彼女は唇を噛み、目を閉じた。
(わたしは……っ)
人界の惨状、都の崩壊、子どもの泣き声が脳裏に焼き付き、彼女の心を締め付ける。
(わたしは帰らなければっ…苦しんでいる人たちのところへ…!)
「…っ…わかり、ました」
声は震え、涙がこぼれた。

