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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第2章 人喰い鬼の討伐

「ッッ──ぐぁ…!」

 鬼が苦しみ出す。

 巫女は気力の続くかぎり集中して、胸の内で念を唱えた。


 ───パリンッ!!!


「──きゃああ!!」


 しかし突然、錫杖の先が粉々になって弾け飛ぶ。

(そんなっ!…神器が…!?)

 それに続き、鬼に貼った御札も一瞬で、真っ黒の炭に変わってしまった。


 ガッッ...!


 信じられないと目を見開いた巫女の細首を、鬼の手が素早く掴む。



 消し炭となった札が地に落ちた。



「‥‥‥ッッ‥‥ぁ‥う゛‥‥!」

「ク……ククク……、久方ぶりに胸が踊る……!」

 苦しむ彼女の顔を覗き込み、鬼はニヤリと黒笑した。

「お前ほど強い霊力の人間は初めてだ。面白い……!長く生きてみるものだなぁ?」

「‥‥カハッ‥‥ぁ‥!‥‥ぁ゛‥‥!」

「いつもの様にさっさと殺しておこうと思ったが……やめだ。お前は俺のモノにする…──」

「‥‥ぁ‥‥ナニ‥‥ッ‥‥を‥‥‥!?」

 首を絞められ息ができない彼女の手から、壊れた錫杖がこぼれ落ちた。

 目の前の金色の目が歓喜で眩く光るのが、ただただ恐ろしい。だが逃げられず、少しずつ身体に力が入らなくなる…。

(気を失ったら……駄、目……っ)

 閉じてしまいそうな瞼を懸命に持ち上げ、相手を睨んでいた巫女だったが

「‥ッ‥‥んん」

 チュッ───

「‥‥ん‥!?」

 ふいに首を締める力がゆるんだかと思うと、何故か、彼女は鬼に口付けられていた。



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