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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第2章 人喰い鬼の討伐

その美しさはまさに、男が人外の存在であることの証明だった。
それを思えば…男が頬に浮かべる整った笑みも、邪悪そのものである。
「……!」
「一度だけ機会をやろう。偶然迷い込んだことにしてさっさと立ち去れ」
「わ…わたしは…あなたを祓(ハラ)いに来たのです」
「祓う?クク……震えているようだがな?」
「これは…!」
逃げ腰ではいけない。巫女は錫杖をぎゅっと握りしめた。
この鬼は強い──それは痛いほど伝わる。
だが逃げては駄目だ。この鬼の悪行を止めることが彼女の使命。
「震えてなどおりません。都(ミヤコ)の人々を恐怖に陥れるあなたを、のこのこ見逃しは致しませんよ」
「ほぉ……では、何か余興を見せてくれると?退屈しのぎにはなるのだろうな?」
「心配ご無用!」
彼女は目を閉じ集中して、片手で印(イン)を結び、もう一度錫杖(シャクジョウ)を高く掲げた。
リン──!
それを勢いよく地面に突き刺した時、大きな鈴の音が辺りを激しく震わせた。
「──ッ!?」
衝撃波のようにして広がり、鬼に直撃する。すると鬼は身動きがとれなくなった。
「……ッ…?」
ビリビリと雷撃にうたれる感覚が鬼を襲う。
驚く鬼の足元へ、巫女はゆっくりと近付いた。
懐から御札を出す。
「動けませんよ。これで…あなたを祓います…!」
「女…っ…お前、面白いな……!」
「鬼界へお戻りなさい!」
巫女が近づくのに合わせて、鬼を拘束する雷撃の力も強くなる。鬼が牙を食いしばり拳を握るが、変わらず動きは封じられていた。
巫女は最後に御札に念をいれ、それを鬼の胸に貼った。

