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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第5章 逃避の代償

 そしてある夜

「鬼の気配が…消えた……?」

 ふとした瞬間、これまで屋敷の周囲を固めていた鬼の妖気が消えていた。

 またとないチャンスだ。隙(スキ)を見計らい、巫女は決意を固める。

 屋敷の奥に隠されていた壊れた錫杖(シャクジョウ)の欠片を手に握り、裸足のまま部屋を抜け出した。

 暗闇の中、足音を殺しながら板張りを踏む。戸の隙間から外の冷たい風を感じた瞬間、彼女の胸にほんの僅かな希望が灯る。

(ここから、逃げなければ……!)

 戸を押し開けると、冷たい夜気が彼女の肌を刺した。

 月の光が薄く山頂を照らし、遠くに見える森が彼女を呼んでいるようだった。巫女は一瞬も躊躇せず、屋敷を後にして山の斜面を駆け下りた。

 蓬霊山(ホウレイヤマ)の森は深い霧に包まれ、木々の間を縫うように走る巫女の息は白く凍てついていた。足の裏は石や枝で切り裂かれ、血がにじんでいたが、彼女は止まらなかった。

 鬼が背後から迫ってくるような錯覚に襲われながらも……ただひたすらに逃げ続ける。

(まずは人の世へ戻り、穢れを清めて、再び鬼と対峙する)

 ザワッ....

「ハァッ……ハァッ……何故?結界が弱まらない…っ」

 しかし、どれだけ走っても景色は変わらない。森の奥へ進むほどに、空間が歪んでいるような感覚が強くなった。

 木々の配置が不自然に繰り返され、月は一向に動かず、空気は重く澱んでいる。巫女は立ち止まり、錫杖(シャクジョウ)の欠片を握り潰すほど力を込めた。

(この山全体にまで鬼の結界が広がって……抜け出せなくなっている……!?)

 絶望が彼女の心を締め付けた。


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