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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第19章 鬼界の異変

(──守らなければ)
巫女は鬼が着せた黒衣の衿をぎゅっと掴んだ。鬼の匂いが、彼女の決意を後押しする。
(あなたも戦っているのだから……!)
巫女は決意を固めて、玉藻に言った。
「わたしが向かいます」
その言葉に、玉藻が驚いて顔を上げた。
「ぇ……?」
巫女は繰り返した、声に力を込めて。
「わたしが鬼界へ行き呪いを浄化します。その為には神器が必要です」
彼女は屋敷の中へ引き返す。熱でふらつく足取りを、意志の力で支える。
「そ、それはダメじゃ!」
玉藻が慌てて追い、巫女の袖を掴もうとした。
地下への階段を降りる巫女の背中に、必死の声が響く。
「おぬしら人間は鬼界にはいれぬ! 妖気にあたってすぐに死ぬ!わしはっ…影尾を助ける方法を教えてほしくて…っ」
「鬼王が言うにはわたしには妖気の耐性があるようです。…少しは時間を稼げるでしょう」
巫女の声は静かだが、揺るぎない。
「少しばかり耐性があろうと、おぬしにとって猛毒じゃぞ!?」
「……ええ、わかっています」
玉藻の反対をものともせずに地下の一室に入った巫女の前には、天哭ノ鏡(テンコク ノ カガミ)が祀られていた。
今の鏡は人界を映しておらず、星屑のような光をまとっていた。
巫女はそれを手に取る。
(あなたの大切な物を武器として使う事、…どうか、許してください)
心の中で鬼に謝罪する
そして深い呼吸をしたその直後──
巫女の周りに、光り輝く霊気が放出された。

