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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第19章 鬼界の異変

「……!」
" 呪い "
それは法力や霊力、妖力とは異なる、得体の知れない現象。
不明な点は多いが、ただひとつだけ確かなのは…
《 呪いは人間から生まれる 》
ということだ。
(鬼界に人はいない。なのにどうして? どこから呪いが?)
焦せるに従い、頭の痛みが巫女の思考をさらに乱した。
「わらわは森で呪いに襲われたんじゃ。そのとき怪我した足は、巫女、おぬしが治してくれた。そのあと影尾は呪いの元凶を探しに行って…っ」
「玉藻っ…教えてください。侵食とは? いったいどれほどの規模で広がっているのですか?」
玉藻の表情がさらに暗くなり、涙が頬を伝う。
「森にあった狐の村は……ぜんぶ呑まれた。呪われたモノノ怪の数は五百をこえとる。そいつらが周りを襲うから、鬼王さまが戦っておるんじゃ!」
「そん、な…!」
その規模の深刻さに、巫女の顔がさらに青ざめた。
心臓が早鐘を打ち、熱で重い身体が震えた。
「呪われた者を殺せばっ…呪いは広がります! 呪いに立ち向かうのは悪手です!」
巫女の声が、屋敷の広間に響く。玉藻が涙を堪え、必死に頷く。
「鬼界に浄化の力を持つ者はいないのですか!?」
「おるわけなかろう…っ」
玉藻が泣き崩れ、巫女の黒衣にすがりつく。
彼女はモノノ怪だが、今の巫女には、悲しみにくれる人間の少女と何ひとつ変わらない。
その小さな震える姿に、巫女の心が強く動いた。

