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愛の笛
第4章 悪友の結婚

そうこうするうちに、タクシーは彩佳の家に到着する。

「さあ、彩佳の家に着いたよ」

甘えて体を寄せてくる彩佳を引き剥がして
到着したから降りろと命じた。

「あんたさぁ、荷物持ちを引き受けてくれるって言ったじゃん。
男ならさぁ、ちゃんと荷物を部屋まで持ってきてよ」

仕方ないなあ…

「運転手さん、ちょっと荷物を部屋に置いてくるからそのまま待っていてよ」

「そんなことしなくて良いわよ、荷物、全部まとめて私の部屋に放り込んでおけばいいじゃない
折を見て葉子も草薙くんも荷物を取りにくればいいじゃない」

それにさ…ちょっと酔いざましにコーヒーでも飲んでいきなさいよと命じられるままに三人分の引き出物の荷物を持って草薙は初めて彩佳の部屋を訪問した。

「今すぐコーヒーを淹れるからさぁ、適当にその辺に座っていてよ」

「いや本当におかまいなく
コーヒーを一杯飲んだら帰らせてもらうから」

「そんなにこの部屋に長居するのがイヤなの?」

「そう言う訳じゃないけど…
ほら、独身女性の部屋にこうしてお邪魔していることだけでも不謹慎だなと思っているし」

「ほんと、あなたって昭和の男みたいだわ
今どき女の部屋に男が遊びに来たっていいのよ」

マグカップにコーヒーを注ぎ入れて「ブラックでいいでしょ?」と手渡してくれた。
とにかくコーヒーだけ頂いてさっさと帰ろう…
草薙は急いでコーヒーを喉に流し込んだ。

「熱っ!」

あまりの熱さに思わずコーヒーを吹きこぼしてしまった。

「まあ!大変!
ジャケットに染みがついてしまうわ!!」

脱いで頂戴、染み抜きをしてあげるからと
彩佳はスーツのジャケットを脱がしにかかる。

「いや、大丈夫です
どうせ安物のスーツですから…」

そう言って断ろうとしたのだが、彩佳は脱ぎなさい!と半分叱りつけるように無理やりジャケットを脱がしてしまった。

「まったく!手のかかる坊やなんだから!」

ブツブツと文句を言いながら、せっせと染み抜きをしてくれる。
その手が「あら?」とジャケットの内ポケットに隠してあった例の縦笛を見つけてしまった。

「何これ?
あ、そうか!余興で指名されたらコレを吹くつもりだったのね?」

お願い!いまここで何か演奏してよと
彩佳は縦笛を無理やり草薙に押し付けた。
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