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愛の笛
第4章 悪友の結婚
披露宴も終わりかけになる頃、
あの鰻屋の時のように葉子のスマホに着信があって、
「ごめん、私、行かなきゃ…充希と衣笠くんにはよろしくと伝えておいて」と言い残し、新郎新婦が両親に対してお涙頂戴の挨拶をしているのを尻目に披露宴会場を抜け出した。
「あれ、男からの呼び出しだわね」
彩佳がポツリと言ったのを草薙は聞き逃さなかった。
「まさかぁ~、あの高慢ちきな葉子に彼氏がいるとでも?」
彩佳の独り言に対して草薙は嫉妬心にメラメラとした炎を燃やした。
「わかんないわよ、世の中にはさあ、あんな女が好きな男だっているでしょうし…」
そう言われて草薙は自分の事を言われているようで赤面した。
「で、草薙くん、この後のご予定は?」
急に話題を切り替えられて草薙はアタフタした。
「特に何もないよ
どうせ呑みすぎて仕事にもならないだろうからバイト先には休暇をもらっているし」
「そ、じゃあ、私を送っていってよ」
「えっ?」
「何を鳩が豆鉄砲を食らった顔してんのよ
言っとくけどデートのお誘いじゃないからね。
ほら、この重そうな引き出物を見てピンと来ない?
男なら気を利かせて荷物持ちを名乗り出るべきじゃない?」
ああ、なるほどね…
確かに重そうな引き出物だし、女性が持つにはしんどいだろうなと思った。
結局、草薙は自分の物と葉子の分に加え、彩佳の分までまとめて持ち運ぶ羽目となった。
幸いにもご両家から「お車代」と称してタクシー代を充分に頂いていたので、式場からタクシーで彩佳の部屋まで先に送り届ける事にした。
「あ~あ、充希と衣笠くんは今夜、初夜かぁ~
いいなあ~」
「今時、結婚式を済ますまで純潔でいるわけないだろ
今夜は単なる新婚旅行前の一夜に過ぎないさ」
「あら?無垢な草薙くんにしてはドライな考え方ね」
「だって、本当の事じゃないか」
「その点、私たちはダメね~
私なんか、いまだにフリーなんだもん」
そんなことを言いながら彩佳はタクシーの後部座席で草薙に甘えるように体を預けてきた。
『これって…俺を誘ってる?
まさかな、披露宴で酒を呑みすぎて酔っぱらってしまっただけだろうな』
女性からのお誘いサインに気づけないほど
草薙は男女の付き合いに疎かった。

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