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愛の笛
第1章 プレゼント

その夜、島民たちは草薙の慰労会を開いてくれた。
ビザの関係で早朝に島を出てサイパンに向かわなければならないので辞退を申し出たが、島の長老が是が非でも慰労会を催したいと言ってきかない。

「じゃあ…ほんの短時間だけですよ…」

酒をあおるようにして呑んで寝過ごしてしまう事だけは避けたかった。

宴もたけなわで、そろそろお開きにしてもらいたいと思い始めた時、島の長老が何やら大層な箱から一本の縦笛を取り出した。

「コレ、アナタニサシアゲマス」

「いいんですか?大事な縦笛なんでしょ?」

「コノ笛ハ、アナタヲハーレムニツレテイッテクレマス」

「へえ~、何かのおまじない効果ですかね?」

受け取った縦笛を、早速吹こうとすると
「イマハダメデス!愛シタイ女ノタメニ吹キナサイ」と注意をされた。

『何だかアラジンの魔法のランプみたいな感じだな』

ありがたく頂戴しますと、草薙は小さな縦笛を懐に仕舞い込んだ。


草薙が解放されたのは深夜遅くだった。
もっと早くに解放してほしかったけれど、
島民が次から次へと感謝の意味を込めて酒をお酌してくれるものだから、したたかに酔ってしまった。

『ふぅ~…明日、起きれるかな?』

酔っぱらって目を回しながら、草薙は必死に帰国の荷物をまとめ始めた。

そんな時、長老の孫娘が荷物をまとめる手伝いに飯場の部屋に訪ねてきてくれた。

「ありがとう…どうも荷造りってやつが苦手でね
それに酔っているから手元がおぼつかなくて…」

「ソウダトオモイマシタ
ホントハ、島ノダレモガアナタニ帰ッテホシクナインデス」

「僕も出来れば残りたいけどね、ビザの有効期限が切れるんだよ」

そう言いながら草薙は上着を脱いだ。
上着の内ポケットから例の縦笛がポトリと床に落ちた。

「こんな笛をもらってしまったよ」

どれ、どんな音色がするんだろうと、
荷造りをしてくれる長老の孫娘の尻を眺めながら
縦笛に口をつけてフーッと吹いてみた。

笛からは素敵な音色どころか、
シューっという息が吹き出る音しかしない。

『ふぅ~ん…音を鳴らすのにコツでもあるのかな?』

草薙はがむしゃらに吹いてみたが、
一向に音が鳴る気配はなかった。

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