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愛の笛
第1章 プレゼント

翌朝、窓から射し込む眩しい陽射しで健一は目を覚ました。

周りを見渡すと、毎朝、大いびきでベッドで大の字になっていた面々の姿はなく、もぬけの殻という表現がピッタリだった。

『なんだい!どいつもこいつも!
そんなに日本が恋しいのかよ!
ボランティア精神はどこに消えちまったというんだい!』

貴重な水で顔を洗い、身支度を整えて飯場から出て掘削現場に向かうと、現地の若い男たちだけが草薙を出迎えた。

「アナタハ帰エラナカッタト聞キマシタ…
ワタシタチモ手伝イマス。ドウカ、井戸ヲホリアテテクダサイ」

「ありがとう!みんな、本当にありがとう!!
絶対に井戸を振り当ててみせるからね」

草薙が鼓舞すると、島の面々はスコップを手して「おーっ!」と勢いのある声を発した。

しかし、ボランティアリーダーが危惧したとおり、
いくら掘っても水は湧き出てこない。
日にちだけが経過してゆき、健一のビザの有効期限が切れようとしていた。

『くそっ!タイムリミットか…』

これが最後の一打ちだ…
健一は願いを込めてつるはしを打ち付けた。

ジョボジョボ…

つるはしを抜いた穴から水が噴き始めた。

「やったぁ!水だ!水が出たぞぉ!!」

水はあっという間に健一の胸にまで達した。
慌てて縄ばしごを掛け登った。
水面は、これでもかと上昇してくる。

『もう少し…もう少しだったんだ…
あのまま一行が残って掘っていれば一週間もしないうちに水脈にたどり着いたんだ…』

井戸から出て、豊富な水量を眺めながら島民たちが小踊りするのと対照的に健一はヘナヘナと腰を降ろして、やりきった充実感に浸っていた。


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