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愛の笛
第4章 悪友の結婚
「本題に入らせてもらいますね
結婚式のご祝儀の事なんですけど…」
「なによ、そんなことで呼び出したわけ?」
「そう、日本にほとんど居てなかったから、
今の結婚式のご祝儀の相場がわからなくて…
それにほら、僕たち友人関係は金額を統一しておいた方がいいのかなと…」
「相場ねえ…
一概には言えないけれど、昨夜、あなたの後に彩佳から電話があってね、いくら包むのかあなたと同じように相談されてね
三万円ぐらいでいいんじゃない?って言ったのよ」
「三万円かぁ…」
三万円ぐらいなら持ち合わせはあるけれど、
ご祝儀に使ってしまうとスーツを新調しようとしていた予定が狂ってしまう。
「立て替えておきましょうか?」
葉子が草薙の表情を読み取って、さりげなくそう言ってくれた。
「本当かい?そうしてもらえると助かるよ」
「言っておくけど、あげるんじゃないからね
あくまでも立て替えておくだけだから、ちゃんと返してよね」
「それはもちろん!もし払えない時は体で返すよ」
「ふん!私を抱きたいからって踏み倒したらタダでおかないわよ」
いよいよ笛の助けを借りる時が来たと、
草薙は懐に手を差し込んだ。
だが、草薙が笛を内ポケットから笛を抜き出すよりも先にテーブルに置いている葉子のスマホが震えた。
「ちょっとごめんなさいね」
葉子はスマホを手にすると、口元を手で隠して小さな声で通話を始めた。
そのうち、葉子の顔が厳しくなり、通話を終えると草薙に向かって申し訳無さそうな表情をした。
「誰から?」
「外務省の上司からなの、申し訳ないけど、私、行かなきゃ」
「えっ?日曜だよ?
休日なのに仕事で呼び出されるの?」
「あなたは自由人だからわからないけれど、
国家公務員ともなると休みなんてあってないようなものよ」
とりあえず、結婚式のご祝儀はこちらで用意しておくわ
ゆっくりと食事を楽しんでいってね。
そう言うと葉子は伝票を手にするとバタバタと帰り支度を始めた。
「持って!そこまで送るよ」
草薙も彼女の後を追って慌てて店の外に飛び出した。
店から外に出ると、黒塗りの車が横付けされていた。
車に乗り込もうとする葉子の腕を取り、口づけをした。
怒るかなと思いきや頬を染めて「バカ…」と嬉しそうに微笑んで車の中に消えた。

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