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愛の笛
第4章 悪友の結婚
翌日、草薙は葉子を呼び出してランチを共にした。
「お昼でも一緒にどうだい?」と誘った時は
性懲りもなく、また私を口説こうとしてるの?と遠回しに拒絶してきたが「いやいや、そうじゃないんだ。ほら、衣笠が今度結婚するって知ってたかい?」と通話を切られる前に慌てて早口で喋った。
「ええ、そのようね。結婚式の招待状が届いていたわ」
「その事で色々と相談したいことがあって…」
「ああ、その事なの?
それなら食事を一緒にしながら色々と話しましょ」
草薙としては、近所のファミレスでもと思ったのに
例のごとく、こちらの事などお構いなしに鰻の蒲焼きで有名な店を指定してきた。
約束の当日、草薙は精一杯の身だしなみを整えて
待ち合わせ時間に遅れないように指定の店に足を運んだ。
しばらく店の前で待っていると、
一台のタクシーが停まって中から葉子が降りてきた。
「時間厳守なのね、その点は誉めてあげるわ」
そう言うと「お腹、空いてるでしょ?奢ってあげるわついていらっしゃい」とまるで女王様のように先に歩きだし、草薙は従者のように数歩下がって後に続いた。
「さあ、たくさん召し上がれ」
そう言われて差し出されたメニュー表を眺めてみると、
単品の「う巻き」ですら1,000円もするではないか!
懐具合と相談しながら何を注文すればいいんだと焦っていると、葉子は「うな重の松でいいわよね?」と勝手に注文してしまった
「うふふ、そんな困った顔をしないでよ。私がこの店を指定したんだから奢らせてもらうわよ」
「悪いね…稼ぎの少ない男で…」
知らぬうちに草薙は卑屈な態度を取っていた。
「やだ…プライドを傷つけたのならごめんなさいね
私ったらほら、気づかいの出来ない女だから」
どうやら葉子は、陰で皆から高慢ちきな女という不名誉なあだ名を付けられていることも知っているようだった。
「私、みんなにあまり良くないように思われているのも百も承知よ。
だけど、こんな私にあなたは「いの一番」に連絡してきてくれたでしょ?それが、なんだか無性に嬉しくて…」
鰻を頬張りながら、上目使いで葉子は草薙を見つめた。
『おい、これってもしかして脈ありなんじゃ…』
そうか!彼女なりに俺を誘っているんだ!
もしかしたら、今夜この後の事を期待して葉子は鰻を俺に食わせているのかもしれないと、一人で興奮し始めた。

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