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愛の笛
第4章 悪友の結婚

三十路の女になど興味のない草薙だったが、
一度だけ美穂を抱いてしまうと、その柔肌の虜になった。

正攻法で口説くという事を知らない草薙は、例の笛に頼るしかなかったのだが、あの夜のように二人っきりになる機会がない。

寂れたバーだと思っていたのに、
それなりの常連客がいて、入れ替わり立ち替わり誰かがやって来るものだから笛を吹くチャンスは訪れない。

おまけに、やはりオーナーのマスターと美穂はデキているのか、
最近は草薙を辞めさせたがっている雰囲気がプンプンしてきた。
だから美穂には、仕事の事以外での会話は皆無だった。
絶対に美穂を口説こうとしている素振りは見せてはいけなかった。

しかし、こうも女を抱けない日々が続くと悶々としてくる。
オナニーで気を紛らわせるしかないのが辛い。
童貞坊やならばオナニーで満足出来るだろうが、女の体を知ってしまった男にとってはオナニーなどでは到底満足出来るものではない。
これが高給取りなら、遊ぶ金もたんまりとあるだろうから、
風俗に遊びにでも行けるのだろうが、しがないバイト生活の草薙には生活を維持するのがやっとで遊ぶ金などどこにもなかった。

ある日、バイトを終えて深夜に帰宅すると郵便受けに金縁に彩られた一通の封書が届いていた。

誰からだ?
考えられるのは帰国後、この部屋を借りたのを知っているのは
同窓会を開いてくれた友人たちの誰かであることは間違いない。
この住所を教えたのは彼らとバイト先のマスターだけなのだから。

何気に封書の裏を見て差出人を確認してみた。
案の定、悪友の衣笠幸男だった。
ただ、驚いたことに、同じく同窓生の木内充希の名前が連名で書かれていたことだ。

「えっ?」

あわてて封を切って中を確認すると、結婚披露宴の招待状だった。

『まさか、あの二人がねえ…』

先日の同窓会では微塵もそんな素振りを見せていなかったのに。

なんにせよおめでたい。
もちろん披露宴には出席させてもらうよと
招待状の『出席』に丸印をつけて返信した。


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