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愛の笛
第1章 プレゼント
ここ、南海の孤島であるシープ島に建てられた飯場で、
その夜、緊急ミーティングが開かれていた。
。。。。。。。
「以上の考察から、この井戸の削掘は一旦白紙に戻して
一度日本に帰って、新たなメンバー編成で再チャレンジするのが妥当と思われる」
ボランティアリーダーの越中さんが苦虫を噛み潰した苦々しい顔で苦渋の決断を下した。
やるだけやったんだから仕方ないか…
メンバーたちはすでにあきらめの表情をしていた。
「ちょっと待ってください!
最初に調査をした時には解析画像にハッキリと水脈が映っていたじゃないですか!」
ミーティングを終えて自分達の部屋に戻ろうとするメンバーの流れに逆らうように、草薙健一はそんなメンバーの人の流れに抗うようにリーダーの前に歩み出た。
「君は確か…ええ~っと…」
リーダーの男は草薙の名前が出てこずに人差し指でおでこをトントンと小突いた。
「草薙です。帝都大学OBの草薙健一です」
「そうそう、草薙くんだったね
君は私の下した決断に不服だというのかい?」
「ええ、不服ですとも!
あれだけ超音波で水脈を確認したじゃないですか!
もう少し…あともう少し掘れば、きっと水が湧き出ますよ!」
「確かに…我々の調査に間違いはなかったと私も信じておるよ…
だが、先日の地震で水脈が断たれてしまったかもしれないんだ。
メンバーにも疲労の色が濃く出ている事だし、諦めるとかではなくて、一度帰国してリフレッシュしてからもう一度メンバーを募って出直そうと言っているんだよ」
「島の人たちに山奥の池に水を汲みに行く過酷な生活を続けさせていいんですか?
僕は嫌です!何なら僕一人でも島に残って井戸を掘る覚悟です!」
リーダーは、自分の下した決断に異を唱えた青年が鬱陶しくなってきた。
売り言葉に買い言葉ではないけれど、「いいだろ、そこまで言うのなら君一人が残って掘り続けなさい!」と恫喝した。
「ええ、そのつもりです!」
帰り支度を始める面々を無視して
草薙健一は自分の寝床に身を横たえて、明日からの労働に体力を回復させるために睡眠を取った。

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