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愛の笛
第2章 同窓会

「気分を害したわ。帰ります!」

ズカズカと大股で皆が盛り上がっている個室のドアをバン!と開けると「皆さん、ごきげんよう」と一声だけ言い残し、
ジャケットとハンドバッグを手に取ると唖然とする一同に見向きもしないで個室を出ていった。

「おいおい!お前が何かヘマをやらかしたんじゃないのか?」

シラケきった空気を草薙のせいにしようと誰かが言い出した。

「おい!何とか機嫌をとりなしてこいよ」

一人が言い出すと、堰を切ったように皆が「何してんだよ!さっさと追いかけて土下座でもして連れ戻して来いよ」と草薙の尻を叩く。

まあ、元はと言えば、笛を吹いて驚かせたのも一因だし、
自分のせいではないと言いきれないので、草薙はあたふたと葉子の後を追いかけた。

もうとっくにタクシーでも拾って影も形もないだろうと諦めかけてはいたが、店を出ると葉子は大通りでポツンと一人で立ちすくんでいた。

「葉子、笛を吹いて驚かせたのは謝るよ
だからさあ、機嫌を直して呑み直そうぜ」

「いやよ!私、もう我慢できないのよ!」

タイミング良くタクシーが近づいてきたので
葉子はスッと手をあげてタクシーを停車させた。

タクシーのドアが開くと「何してんのよ!乗りなさいよ!」と草薙の背中を押して無理やりタクシーに乗車させた。

「ちょ、ちょっと葉子!」

僕は君を引き留めに来たのであって、拉致されに来た訳じゃないぞと、慌ててタクシーから降りようとするのを遮るように葉子もタクシーに乗り込んできた。

「運転手さん、出して!」

「葉子、一体どこへ?」

「私の部屋…」

葉子が告げる住所をタクシーの運転手はナビゲーターに打ち込んだ。

タクシーが走り出すと共に葉子は草薙に抱きついてきた。

「えっ?あの…ちょっと…」

「気分を害した責任を取ってくれるんでしょうね?」

そう言いながら葉子は草薙の体を撫で回す。

「責任って?」

「わかってるくせに!」

葉子のか細い指が草薙の股間のシンボルを握りしめた。

「あら?勃起していないじゃないの!」

『勃起』というワードにタクシーの運転手は興味津々の眼差しでバックミラーで後部座席の二人を見つめる。
不意に運転手と目が合ってしまい「彼女、どうやら呑みすぎて酔っぱらってるみたいで…」と葉子の不埒な台詞を酔いのせいにした。
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