この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛の笛
第2章 同窓会
「ちょっと様子を見てくる」
立ち上がって後を追いかけようとするのを皆が引き留める。
「よせよせ、あんな奴、ほっとけばいいんだよ」
「そうよ、自分がエリート官僚だからと私たちを下に見ちゃってさ」
こいつら何を言ってるんだ?と
全員にグラスの水をひっかけてやりたい衝動に駆られる。
葉子が到着するまで、よってたかって草薙を見下して酒の肴にしていたくせに。
「お前たち、変わっちまったな」
草薙はそのように吐き捨てると急いで葉子を追いかけてトイレに向かった。
女子トイレの前でしばらく待っていると
リバースして少しは落ち着いてきたのかしっかりとした足取りで葉子が出てきた。
「なに?あなた、私のストーカーにでもなるつもり?」
「いや、心配だから様子を見に来ただけだよ」
「あなたに心配されるほど酔いつぶれていませんから。
なに?私の気を引こうとしてるの?
はん!言っておきますけどね、私はあなたみたいな男が一番嫌いなのよ!」
「いや、本当に気を引こうとか、そんなんじゃなくて…」
「あんたみたいな非生産性のない男は最低なのよ!
自分でわかってる?
日本人なら日本で働いてしっかりと税金を払いなさいな!」
「君に僕の人生をとやかく言われる筋合いはないはずだけど?」
売り言葉に買い言葉で口調が激しくなってしまう。
「私たちが日本を良くしようと頑張っても、
あんたみたいにろくに働きもしないで海外で動いていても誰も有り難く思っていないんだからね!」
ふん!お高くなりやがって!
俺はな、日本だけじゃなくグローバル的な視線で世界平和に貢献してるつもりなんだぞ!
不意に、この女を抱いてヒィヒィ言わせてみたい気分になる。
気性の荒い高慢ちきな女を抱いて従順な女にしてやるのも悪くはないな…
「いつまで女子トイレの前に突っ立っているつもりよ!
この変態野郎!!」
草薙の肩を突き飛ばして席に戻ろうとする葉子の背後から
慌てて懐から例の笛を取り出すと耳元でフーッと笛を吹いてみた。
「きゃあ!何をするのよ!
いきなり変な音を吹きならして驚かせないでよ!!」
あれっ?変だな?
女性にだけ聞こえているのは間違いないんだけど、
あの島の娘のように目がトロンとしてこない…
それどころか、キッと睨み付けて今にも頬にビンタされるのかと思うほど怒り心頭ではないか。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


