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~菊タブー~ さる旧家の闇深い母娘調教録
第14章 :母娘の分断 其の一…雅子への罠

西の都で催された博覧会。
世界160か国が参加するパビリオンは、その日も盛況だった。
「本日は12万人の来場者を見込んでおります、奥様」
貴賓席で、案内人の説明に頷きつつも、菊常家の跡取り御曹司の妻としてこの場に招かれた雅子は、どこか上の空の様子を見せている。
瓜実型の整った白い貌に、グレーのパンツスーツが良く似合う。
聡明でキャリアレディを彷彿とさせる雅子だが、本来持ち合わせているはずのはつらつとした態度は、曇りがちだった。
数日前まで姑に囚われ、愛娘ともども、痴態を撮影された事実。
義妹により救い出されはしたものの、誰かに監視されているような奇怪な視線をずっと浴び続けているような感覚に恐怖心を隠せない。
そして、この博覧会への出席は、その義理の妹、紀子からの依頼だ。
本来であれば、彼女が姿を見せるはずのこのイベントに、格上の兄嫁を借り出す非礼さはともかく、なにか意図があるのでは、と雅子が勘ぐるのは当然のことだ。
何より、本家に残してきた愛子の安全が気になる。
そんな母性を麻痺させるほどの眠気に襲われたのは、首長、館邪(たてしま)のスピーチの際だった。
口内がなぜか苦く、呂律が回らぬ感覚にも当惑した。
(おかしいわ…。先ほど、控室でお茶を口にしてから、言葉が出にくいわ)
「ええ―――だからしてぇ~~~この都の繁栄を祈念いたしぃ~~」
縦邪はかつて、噺家として鳴らしたダミ声で、古臭いユーモラスな話術で聴衆をしらけさせたが、その光り輝く頭皮を時折激しく動かし、視線を向ける先には虚ろな表情を浮かべる令夫人があった―――――。
世界160か国が参加するパビリオンは、その日も盛況だった。
「本日は12万人の来場者を見込んでおります、奥様」
貴賓席で、案内人の説明に頷きつつも、菊常家の跡取り御曹司の妻としてこの場に招かれた雅子は、どこか上の空の様子を見せている。
瓜実型の整った白い貌に、グレーのパンツスーツが良く似合う。
聡明でキャリアレディを彷彿とさせる雅子だが、本来持ち合わせているはずのはつらつとした態度は、曇りがちだった。
数日前まで姑に囚われ、愛娘ともども、痴態を撮影された事実。
義妹により救い出されはしたものの、誰かに監視されているような奇怪な視線をずっと浴び続けているような感覚に恐怖心を隠せない。
そして、この博覧会への出席は、その義理の妹、紀子からの依頼だ。
本来であれば、彼女が姿を見せるはずのこのイベントに、格上の兄嫁を借り出す非礼さはともかく、なにか意図があるのでは、と雅子が勘ぐるのは当然のことだ。
何より、本家に残してきた愛子の安全が気になる。
そんな母性を麻痺させるほどの眠気に襲われたのは、首長、館邪(たてしま)のスピーチの際だった。
口内がなぜか苦く、呂律が回らぬ感覚にも当惑した。
(おかしいわ…。先ほど、控室でお茶を口にしてから、言葉が出にくいわ)
「ええ―――だからしてぇ~~~この都の繁栄を祈念いたしぃ~~」
縦邪はかつて、噺家として鳴らしたダミ声で、古臭いユーモラスな話術で聴衆をしらけさせたが、その光り輝く頭皮を時折激しく動かし、視線を向ける先には虚ろな表情を浮かべる令夫人があった―――――。

