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わたしの放課後
第6章 天使と悪魔
 「今日はどうするの?」
 「今日はあまり早くも帰れないので…」
 「ああ…お母さん?」

 今日は母が若い男と密会する日。家で逢っていてわたしにもバレているのだからもはや『密会』でもないのだけど。母と娘がそれぞれ若い男とおじさんとこっそりセックスしている。そんな母娘《おやこ》のことをおじさんはどう思っているのだろう。

 「お母さんとは仲よくしているの?」
 「はい…。特に喧嘩したりすることもないです」
 「お母さんは恵子ちゃんに感謝していると思うよ…」
 「どうなのかな…。まあ…そうなんでしょうね…」
 「きっと一人の女性に戻れているのじゃないかな」
 「最近イキイキしているようには見えます」

 母が家族のことも忘れてセックスしていると思うとちょっぴり複雑な気分…。でも、母もようやく生きたいように生きようって思ったということなのかな…。あえて自分の秘密をわたしと共有したのは、母娘という関係はもう卒業して、これからは、一人の女として生きていくというメッセージだったのかもしれない…。母はいったいどんなセックスをしているのだろうか…。

 おじさんがお店の方から本を何冊か持ってきてくれた。

 「今までおじさんと恵子ちゃんのような関係を描いた本を見つくろっていたけど、これは年上の女性と若い男性が出てくる本…」
 「ありがとうございます。ブックカバーをかければ電車の中でも読めますね」
 「そうだね。お家でおかあさんに見つかっても、もう恵子ちゃんも知っている関係なのだから気にしないでもいいのかもしれないね」

 「わ…。すご…い」
 「アッ…これは電車の中では無理だね。失礼失礼」

 『男女交合大全』と題された写真集。おじさんは気まずそうに苦笑いしている。

 「古書店ですもの。いろいろな本がありますよね。今日はこれを見て帰っていいですか?」
 「ああ、いいよ。古書店だものね。いろいろ見ていって」

 おじさんと初めて古書市であったときも、お店にはもっといろいろな本があるから遊びに来てね…という会話をしたことを、わたしもおじさんも思い出していたのだろう。なんだかその頃に戻ったみたいな気分。

 「正直、見せるに堪えないようなものもあるんだけど…。そういうのは向こうの棚にあるから…」
 「大丈夫です。わたし分別ありますから」

 わたしは『向こうの棚』を見ながら答えた。
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