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わたしの放課後
第4章 情交のいりぐち
 おじさんが唇を重ねてきて、ひとしきり舌を絡め合う。

 「こういうことって身体だけで感じるものではないと思っているんだ。身体だけでなく頭でもちゃんと感じるものだ…ってね。恵子ちゃんは賢いから、身体だけじゃなく頭でも感じているのじゃないかな」

 「よくわからないけど、気持ちいいことは…確かです…」

 『だから、たびたびここを訪ねてしまっているんです』とは恥ずかしくて言わなかった。

 「なにが『気持ちいい』のかな?」
 「…セックス」
 「おじさんも気持ちいいよ。恵子ちゃんとのセックス。気持ちいいのは虚構ではない…」

 おじさんは、今日もわたしの手を取っておじさんの股間にそっと導いてくれる。『レディに自分から触らせるような破廉恥な真似はさせられない』…のだそうだ。

 「『セックス』を日本語で言うとしたら恵子ちゃんはなんて言う?」
 「『セックス』は『セックス』…あ、『性交』…ですか」
 「そうだね。『交合』とか『まぐわい』とか男女の『営み』、『契り』…。おじさんだったら『情交』かな」
 「じょうこう…」
 「そう。『情交』…字は”情けを交わす”。『情欲の交わり』…」

 とりあえず『交尾』などと答えなくてよかったと思った。『情欲』って『性欲』のこと?

 「恵子ちゃん、まだ、17歳だものね。からだもこころも熟れてくるのはまだまだこれからだというのに、ちょっとおじさんが先走ってしまったね。でも、50近くも歳が離れているのだから許してね。マッチョやアイドルじゃなくておじさんでもいいっていう恵子ちゃんなら、いつかわかってくれると思う」

 確かにわたしはもともとマッチョやアイドルにはあまり興味が無かった。姉の部屋には雑誌の付録のアイドルのポスターが所せましと貼ってあったけど、わたしの部屋はいつも殺風景だった。だから、ということもないけど、マッチョでもアイドルでもないおじさんが相手のセックスでも、わたしにとっては想像していたとおりの甘美なものだった。

 「おじさん『でも』いいんじゃないです。おじさん『だから』いいんです。…あ、それは、おじさんだったら誰でもいいっていう意味じゃないです…」
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