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わたしの日常
第3章 はじめての小旅行
 「カメラはお持ちではありませんか。よろしければお撮りしますよ」
 「ありがとうございます。でも、うちはカメラは持ってきていませんので」

 もともとカメラに残すような旅ではない。写真を撮ったとしても家の近くのカメラ屋に現像してもらうのもためらわれる。先方がどのような関係の二人なのかはわからないが、そのようなことはもう気にする必要もないということなのだろう。

 「そうですか。よろしければこのカメラでお撮りしてお送りしますよ」

 縁もゆかりもないところで現像してもらうのならいいのかもしれない、などと思ってしまう。でも、写真を送ってもらうには住所と名前を教えなければならない。

 「いや、すみません。差し出がましいことを申しまして。ご主人と一緒にお湯につかったご縁で、なんだかこのままお別れするのが名残惜しくなりましてね。いまさらですみませんが、私、こういう者です」

 男の人が微妙な空気を察したのか、怪しい者ではないとばかりに名刺を出した。名刺には『S川Y雄』という名前と住所だけが記されている。

 「□□にお住まいなのですか。いい街ですね」
 「ありがとうございます。趣味が高じて現像も自分でしてるんです」
 「それは結構ですね。どうしよう、お願いしようか」

 義父がわたしを見遣る。わたしは頷いた。わたし達はお城を背景に入れて並んで立つと、男の人がカメラを構えてシャッターを何回か押した。シャッターを押してフィルムをまく仕草が堂に入っている。

 「よろしければこちらに…」

 男の人が名刺をもう一枚取り出して胸にさしていたペンとともに義父に渡す。義父が住所と自分の名前を書いた。

 「ありがとうございます。明日帰りましたらすぐ現像してお送りいたしますので」
 「こちらこそありがとうございます」
 「では、よい旅を」

 わたしも女の人…『れいこ』さんに会釈をする。妄想の中で勝手に淫らな会話をしてしまった。『れいこ』さんはにっこりと微笑んで会釈を返してくれた。派手さはないけど義父が言った通りお世辞ではなく綺麗なひとだと思った。

 駅に入り待合室で汽車を待つ。

 「名前を書くのはどうかとも思ったんだが、わたしの目に狂いがなければ悪い人ではないよ」
 「ええ。お義父さんがそうおっしゃるなら大丈夫でしょう」
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