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第7章 歪み

特に好んだのは村木に見せられた、人妻が主人公の寝取られ動画だった。嫌々だった人妻が夫とは違う男に抱かれ、夫からは一度も感じることのなかった性の悦びに目覚め、最後には幸せな表情で絶頂を迎える展開は貴之を興奮させた。しかし、様々なタイプの女優でシリーズ化されていたどの動画も、社員旅行で見た萩子似の女優の動画程の興奮は無かった。念の為控えていた動画サイトとタイトルから探し出したその動画は、何度見ても興奮した。
何回目かの視聴で、貴之は何故この動画にだけこんなにも興奮するのか気が付いた。
（女優が萩子に似ているから、興奮しているのか？）
ある時、自慰をしながら直前に見ていた動画で女優を萩子に置き換えて妄想してみた。途端に躰中がかっと熱くなり、男根が固さを増した。脳が沸騰しているのではないかと感じる程興奮し、あっという間に射精してしまった。
それで、貴之は悟った。
（僕は、萩子が他の男性とセックスするところを妄想して興奮するんだ）
ネットでその感情について調べると、意外にも同じ男性が何人もいて、それが“寝取られ”という性癖であるということが判った。
それから、貴之の葛藤の日々が始まった。
萩子似の女優の動画を繰り返し見たが、流石に慣れてきて物足りなさを感じるようになった。しかし動画には女優名が解る映像は無く、女優名から別の動画を探すことはできなかった。マイナーな女優なのか、動画のコメント欄に数年前に投稿された女優名の問合せに対する返事も無く、元から視聴数も少なかった。
（あの時村木がこの動画を選ばなければ、こんな思いはしなかったのに）
そんな身勝手な恨み言も頭に浮かんだ。
やがて、新しい動画を見たいのに見れない不満が、貴之の思考を歪ませていった。