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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第3章 女中 千勢(ちせ)

「そうだったの。<文學界>は、川端先生らが純文学の精神追及のために新しく創刊されたもので、かなり難解だけど、確かに、先生は少女向け文芸誌にも立派な作品を寄稿されて、幅広くご活躍されているね。そんなことなら、私の部屋にある本はどれでも手に取っていいから、興味があるものはどんどんお読みなさい。」
「嬉しいです、ご主人様。でも、幸乃さんから<ご主人様のご厚意をいただくのは、必ず私に話しをしてから>と言われていますので、早速にお許しをいただいてから、お言葉に甘えさせていただきます。」
二人の話が弾んでいる間に朝餉が終わると、千勢は台所まで膳を下げていった。しばらくして、布団の中で、うつ伏せになって<文學界>に目を通していた誠一が、襖を開ける音に振り向くと、セーラー服を着た千勢が入ってきた。

