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雨が好き
第90章 恋バナ
【恋バナ】

「これ、この間のお礼です」

2月第四週の土曜日、耀さんが『みなと町』に来てくれた。
ブレンドと小さなカスタードパイを注文し、食べ終わると、すっと二枚の映画のチケットを私の前に差し出した。

今、上映している、恋愛映画の招待券だった。

え?・・・お礼って・・・?

銀のお盆を抱えて、多分、私はきょとんとした顔をしていたと思う。
耀さんはニコリと笑って、そっと耳打ちしてくれた。

「この間のバレンタイン・・・です」

その声のトーンに、なんとなく意味深なニュアンスを感じて、もう一度、耀さんの顔を見る。若干、顔を赤らめているように見えた。

「え?あ・・・っ!えと・・・」

こ、こういうときって、何て言うの?
おめでとう・・・でいいのかな?

私が更に真っ赤になったのを見て、耀さんが慌てて首を振る。

「あ、その、ごめんなさい、変な言い方して。
 そんなんじゃなくて、えと・・・ちゃんと、水際先輩が、その、チョコレート受け取ってくれて・・・だから、それで、う・・・嬉しくて・・・」

ぎゅうっと殆ど空になったコーヒーカップを握りしめる。
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