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雨が好き
第83章 大学生
【大学生】

『みなと町』がオープンして以来、
こんな光景は、なかったのではないだろうか。

エプロンを付けたまま私が厨房のお父さんを見ると、
お父さんは、うん、とひとつ大きく頷く。

それは、『がんばれ』という応援であると同時に、
『お前の役割だからしっかりやれよ』という意味でもある、ということが痛いほど伝わってくる。

もう一度、前を向く。

私の前には、ホールに立つ8人の女子大学生。
みな、思い思いのエプロンをしている。

「さあ!みんな!今日の先生の、古谷みなとさんだよ!」
水際さんが派手に私のことを紹介するものだから、私の身体はガチガチに固まってしまっていた。

「今日はよろしくお願いします!古谷さん」
ぺこり、と一番左端の女の子。多分、ファッションサークルの部長と思われる子が頭を下げた。

それに倣って、他の子もぺこりぺこりとお辞儀をする。
「「よろしくおねがいします!」」

この掛け声で、私の身体は完全に石化してしまった。

一体・・・一体、何でこんなことに・・・
私は数日前の水際さんとの会話を思い出していた。
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