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天狐あやかし秘譚
第94章 神機妙算(しんきみょうさん)
☆☆☆
ぼんやりぽやぽや妄想に浸りながらも、優秀な私は午前中の業務をつつがなくこなしていた。そして、午後一番の予定は『部門会議』であった。
陰陽寮には私が属する『陰陽部門』の他に『天文部門』『暦部門』『漏刻部門』という4つの部門がある。それぞれの独立性は高く、逆に、部門内の業務の凝集性は高い。というわけで、週に1度の衆ごとの会議の他に、月に1度の定例の部門会議というものがある。そこでは、陰陽部門の運営方針だとか、予算取りだとか、人事事項などが話し合われることが多く、まあ、要は退屈なのだ。
ただでさえ出たくない部門会議だが、今日はなおさらである。なぜなら、本来の部門会議は月末であり、もう少し先なのだが、今日は緊急に招集された『臨時部門会議』ときている。要するに、余計に一回多いわけだ。面倒くさいことこの上ない。
部門会議に出席するのは原則『丞』以上の階級のものであり、メモ取りということでもう一人『属』以下の階級のものをつけてもいいとされている。祓衆には土御門の側近である陰陽師の瀬良がいるので、たいていは瀬良がメモ取りをしており、祭部は大鹿島が自身でメモを取ることが多い。我が占部衆は、もちろん私はメモ取りなんてまっぴらゴメンなので、そういうのがめちゃくちゃ得意な冴守を連れて行くことが多かった。ちなみに、今日は珍しく、八咫烏の紀乃(きの)も来るらしい。お供はなしと聞いている。
部門会議は土御門の執務室で執り行われる。広い執務室の傍らに会議スペースがあり、10人ほどが長テーブルを囲んで座れる様になっていた。一番上座に土御門、それに向かって左隣に付き人である瀬良、その左側に左前が座っている。左前と瀬良の向かい側に大鹿島が座り、私は大鹿島の隣、私の隣には冴守が座っていた。
最後にやってきた紀乃は左前の隣に腰を下ろしていた。この中で紀乃だけが、一瞬会議スペースの隣りにある土御門の執務机に目を向けたが、すぐに目をこちら戻した。それを見た私は一瞬どきりとしたが、かろうじて顔に出さなかった。
なぜドキリとしたのか。
それは、紀乃が目を向けた先、土御門の執務机に、幼女神・菊理媛命が腰を掛けていたからである。姿を見せないようにしている神の存在に少しでも感づくとは、さすがに隠密機動の長の名は伊達ではないなと、思う。
ぼんやりぽやぽや妄想に浸りながらも、優秀な私は午前中の業務をつつがなくこなしていた。そして、午後一番の予定は『部門会議』であった。
陰陽寮には私が属する『陰陽部門』の他に『天文部門』『暦部門』『漏刻部門』という4つの部門がある。それぞれの独立性は高く、逆に、部門内の業務の凝集性は高い。というわけで、週に1度の衆ごとの会議の他に、月に1度の定例の部門会議というものがある。そこでは、陰陽部門の運営方針だとか、予算取りだとか、人事事項などが話し合われることが多く、まあ、要は退屈なのだ。
ただでさえ出たくない部門会議だが、今日はなおさらである。なぜなら、本来の部門会議は月末であり、もう少し先なのだが、今日は緊急に招集された『臨時部門会議』ときている。要するに、余計に一回多いわけだ。面倒くさいことこの上ない。
部門会議に出席するのは原則『丞』以上の階級のものであり、メモ取りということでもう一人『属』以下の階級のものをつけてもいいとされている。祓衆には土御門の側近である陰陽師の瀬良がいるので、たいていは瀬良がメモ取りをしており、祭部は大鹿島が自身でメモを取ることが多い。我が占部衆は、もちろん私はメモ取りなんてまっぴらゴメンなので、そういうのがめちゃくちゃ得意な冴守を連れて行くことが多かった。ちなみに、今日は珍しく、八咫烏の紀乃(きの)も来るらしい。お供はなしと聞いている。
部門会議は土御門の執務室で執り行われる。広い執務室の傍らに会議スペースがあり、10人ほどが長テーブルを囲んで座れる様になっていた。一番上座に土御門、それに向かって左隣に付き人である瀬良、その左側に左前が座っている。左前と瀬良の向かい側に大鹿島が座り、私は大鹿島の隣、私の隣には冴守が座っていた。
最後にやってきた紀乃は左前の隣に腰を下ろしていた。この中で紀乃だけが、一瞬会議スペースの隣りにある土御門の執務机に目を向けたが、すぐに目をこちら戻した。それを見た私は一瞬どきりとしたが、かろうじて顔に出さなかった。
なぜドキリとしたのか。
それは、紀乃が目を向けた先、土御門の執務机に、幼女神・菊理媛命が腰を掛けていたからである。姿を見せないようにしている神の存在に少しでも感づくとは、さすがに隠密機動の長の名は伊達ではないなと、思う。

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