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天狐あやかし秘譚
第91章 顧復之恩(こふくのおん)
十和子・・・塔若子が御九里の母親だったということ。
御九里が幼い頃に、塔若子が目の前で鬼となり、大量虐殺を働いたこと。
そして、御九里はこれまでずっと、母親である塔若子がこれ以上罪を犯さないよう、自らの手で屠ることを誓って、追い続けていたこと。
その思いを全て分かるとは、とても言えないけれども、辛そうにしている彼を、なんとか支えたいと、彼女は思っていた。
「おかゆ・・・作ってくれたんだ」
後ろにいる日暮の方を一瞥すると、御九里はポツリと言った。
「一回だけ、なんだけどさ・・・。多分、俺が・・・6歳くらいの時。インフルエンザかなんかになっちまって、高熱でうなされてたとき、さ・・・おかゆ出してくれたんだ」
御九里の頬に涙が流れていた。
それは、顎を伝って、一粒、そして、また一粒と地面に落ちていった。
「今から考えるとさ、あれ、レトルトだったと思うんだけど・・・でも・・でもさ・・・俺のために・・・」
肩が震えていた。そんな御九里の背中を、温かい感触が包み込む。日暮が、彼を抱きしめていた。背中におでこをつけて、ギュッと、彼の身体を掻き抱いていた。おそらくいつもなら、それを振り払っていただろうけれども、このときの御九里は日暮のするがままにさせていた。
「あの時・・・あの時・・・鬼になったのは・・・お・・・俺が・・・傷つけられたからで・・・お、俺が・・・俺さえいなければ・・・いなければ・・・」
母さん・・・
絞り出すような声が御九里の口から漏れる。
御九里が幼い頃に、塔若子が目の前で鬼となり、大量虐殺を働いたこと。
そして、御九里はこれまでずっと、母親である塔若子がこれ以上罪を犯さないよう、自らの手で屠ることを誓って、追い続けていたこと。
その思いを全て分かるとは、とても言えないけれども、辛そうにしている彼を、なんとか支えたいと、彼女は思っていた。
「おかゆ・・・作ってくれたんだ」
後ろにいる日暮の方を一瞥すると、御九里はポツリと言った。
「一回だけ、なんだけどさ・・・。多分、俺が・・・6歳くらいの時。インフルエンザかなんかになっちまって、高熱でうなされてたとき、さ・・・おかゆ出してくれたんだ」
御九里の頬に涙が流れていた。
それは、顎を伝って、一粒、そして、また一粒と地面に落ちていった。
「今から考えるとさ、あれ、レトルトだったと思うんだけど・・・でも・・でもさ・・・俺のために・・・」
肩が震えていた。そんな御九里の背中を、温かい感触が包み込む。日暮が、彼を抱きしめていた。背中におでこをつけて、ギュッと、彼の身体を掻き抱いていた。おそらくいつもなら、それを振り払っていただろうけれども、このときの御九里は日暮のするがままにさせていた。
「あの時・・・あの時・・・鬼になったのは・・・お・・・俺が・・・傷つけられたからで・・・お、俺が・・・俺さえいなければ・・・いなければ・・・」
母さん・・・
絞り出すような声が御九里の口から漏れる。

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