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天狐あやかし秘譚
第90章 末路窮途(まつろきゅうと)
腹を押さえるも、なんとか姿勢は崩さずに済む。そんな御九里に十和子は更に数発の蹴りを繰り出していく。

ずっと、探していたんだ・・・あんたを・・・あんただけを・・・

それをなんとか手にした鬼丸国綱改でいなしていくが、大太刀の間合いよりも近いところで戦われており、御九里にとっては非常に不利だった。ついに連撃のひとつ、十和子の右裏拳を頬に受けてしまう。

脳髄を揺らされ、意識がブラックアウトしそうになる。口の中に広がる鉄臭い味と、鼻に抜ける体液の匂いが、あの日の夜の記憶を御九里に鮮明に思い出させる。

すべての男を殺し尽くし、その血肉で口元を染め、青い月光の中、天に向かって吠えている。かつての面影もなく、ただ悪鬼羅刹に堕ちた、その女の姿を・・・

・・・俺は・・・あんたを・・・するために・・・

強烈な打撃で、御九里の身体が中空を舞う。その意識が途切れるその時、彼の唇が動き、微かな言葉を紡いだ。

「・・・かあ・・さん・・・」
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