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天狐あやかし秘譚
第87章 【第17話:鬼子母神】追奔逐北(ついほんちくほく)
☆☆☆
「これが、今週入ってきた怪異絡みと目されている事件だ・・・まあ、殆どは地方局で処理できる範囲のもんだ・・・本局が出るほどでもない」
ぽん、左前が資料の紙束を会議机の上に置く。ここは陰陽寮祓衆の会議室。定期的に開催される衆の会議が行われていた。衆の会議とは言え、祓衆を構成するメンバーの殆どは『地方局』と言われている日本に7箇所ある分局に配置されており、その管轄区域内の怪異に対処している。そのため、この会議に出ているのは『本局付』と呼ばれる少数の陰陽師のみであった。
本局付とは、文字通り東京九段下にある陰陽寮本庁に在籍している陰陽師のことだ。彼らは地方局では対処できないような特殊な事件に対応する『特別部隊』なのである。祓衆で言えば、それは今、会議に出ている左前、御九里、瀬良などの十数名がそれに該当する。
ところで、陰陽寮陰陽部門には4つの『衆』が存在していて、それぞれの衆には特段の都合がない限り、『位階持ち』と言われている陰陽博士が5名ずつ配置されている。その内、『属の一位〜四位』までが実働部隊の長、そして『丞』の術者がその衆の長という立場となっていた。祓衆では左前甚助が『丞の二位』であり、『衆長』となっている。
位階においては、通常位の数が小さいほどいわゆる『強い』術者であることを意味する。であれば、『属の三位』である御九里よりも、ここにはいない『属の一位』や『二位』の陰陽博士の方が実力は上であり、そちらの方が本局付となるのが道理だと思われる。
ならば、何故、そうではないのかと言われれば、『必ずしも強い術者が本局付になるわけではない』というのがその答えになる。要はいろいろな事情があって配置が決まるのだ。中でも一番大きいのが丞の術者の意向である。
御九里は左前に自分を本局配置にした真意を聞いたことはないが、どうやら成長力を見込んだ、ということらしいとは漏れ伝わってきていた。
『まあ、確かに成長力ってなら、あるだろうな・・・そのうち、もっと出世してやっからよ・・・』
常に、御九里はそんな風に思っていた。
「これが、今週入ってきた怪異絡みと目されている事件だ・・・まあ、殆どは地方局で処理できる範囲のもんだ・・・本局が出るほどでもない」
ぽん、左前が資料の紙束を会議机の上に置く。ここは陰陽寮祓衆の会議室。定期的に開催される衆の会議が行われていた。衆の会議とは言え、祓衆を構成するメンバーの殆どは『地方局』と言われている日本に7箇所ある分局に配置されており、その管轄区域内の怪異に対処している。そのため、この会議に出ているのは『本局付』と呼ばれる少数の陰陽師のみであった。
本局付とは、文字通り東京九段下にある陰陽寮本庁に在籍している陰陽師のことだ。彼らは地方局では対処できないような特殊な事件に対応する『特別部隊』なのである。祓衆で言えば、それは今、会議に出ている左前、御九里、瀬良などの十数名がそれに該当する。
ところで、陰陽寮陰陽部門には4つの『衆』が存在していて、それぞれの衆には特段の都合がない限り、『位階持ち』と言われている陰陽博士が5名ずつ配置されている。その内、『属の一位〜四位』までが実働部隊の長、そして『丞』の術者がその衆の長という立場となっていた。祓衆では左前甚助が『丞の二位』であり、『衆長』となっている。
位階においては、通常位の数が小さいほどいわゆる『強い』術者であることを意味する。であれば、『属の三位』である御九里よりも、ここにはいない『属の一位』や『二位』の陰陽博士の方が実力は上であり、そちらの方が本局付となるのが道理だと思われる。
ならば、何故、そうではないのかと言われれば、『必ずしも強い術者が本局付になるわけではない』というのがその答えになる。要はいろいろな事情があって配置が決まるのだ。中でも一番大きいのが丞の術者の意向である。
御九里は左前に自分を本局配置にした真意を聞いたことはないが、どうやら成長力を見込んだ、ということらしいとは漏れ伝わってきていた。
『まあ、確かに成長力ってなら、あるだろうな・・・そのうち、もっと出世してやっからよ・・・』
常に、御九里はそんな風に思っていた。

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