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天狐あやかし秘譚
第86章 能鷹隠爪(のうよういんそう)
「構えろ、油断するな・・・」
狭い船上だ。敵が来る方向は決まっている。先程から銃声がしないところを見ると、相手が使っているのはおそらくナイフ。だとしたら、これだけの銃で狙えば、手も足も出ないはず・・・、マーカスはそう計算していた。
甲板前方に集まった部下は11人。殺られたらしいというアレクとキシーラ以外にも、7人ほどがすでに見当たらない。そいつらも殺られた、と考えるべきだろう。
ーちっ!・・・いつの間に・・・。どこだ?どこに潜んでる?
女たちを入れたコンテナを背後にし、甲板後部を見渡す。しかし、月影の中、動くものは見当たらなかった。マーカスは全神経を集中させるが、物音、殺気も感じることはできなかった。
ーさすがに臆病風に吹かれたか?
来なきゃ来ないで良い。それこそこっちの狙い通りだ。ゆっくりと後部に追い詰めてやる・・・。
マーカスが黙って手を軽く振ると、その合図で屈強な傭兵部隊が、油断なく銃を構えながらジリジリと進み出す。
ー持久戦に持ち込んで、仲間を待つ・・・か?いや、こっちの『出港』の方が早い!
必勝の配置だ、そうマーカスは考えていた。
甲板上に累々と積まれたコンテナのせいで、見通しは悪いが、じっくりと追い詰めれば必ず勝てる・・・そう踏んでいたのだ。
不意に、前方最右部のコンテナの影から、一人の作業服姿の男が現れた。月明かりに足だけが照らされる。
バン!
発砲音がした。マーカスは慌てて制止をする。どうやら仲間のひとりがよく確認しないで撃ってしまったようだ。
「馬鹿、よく見ろ!レンだ!」
それは彼らの中のレンと呼ばれる中国籍の男だった。無事だったのか・・・と思った矢先、レンの足がふらつき、そのまま倒れた。
「撃て!」
今度こそマーカスが叫ぶ。レンの背後、コンテナの影に、動くものを見たからだ。それは、日本のニンジャよろしく黒尽くめの姿をしているかのように見えた。
マーカスの合図で一斉に仲間が銃を乱射する。銃弾がコンテナにあたり、火花が散る。その火花の中を身をかがめた黒い何かが走り抜けていく。
「くそ!何だあいつ!銃が当たらねええ!!」
素早い身のこなしで、ジグザグに走っている。予期せぬ場所で急激に方向転換をするものだから、銃の直線的な『狙い』では捉えることが困難だった。
「展開しろ!」
狭い船上だ。敵が来る方向は決まっている。先程から銃声がしないところを見ると、相手が使っているのはおそらくナイフ。だとしたら、これだけの銃で狙えば、手も足も出ないはず・・・、マーカスはそう計算していた。
甲板前方に集まった部下は11人。殺られたらしいというアレクとキシーラ以外にも、7人ほどがすでに見当たらない。そいつらも殺られた、と考えるべきだろう。
ーちっ!・・・いつの間に・・・。どこだ?どこに潜んでる?
女たちを入れたコンテナを背後にし、甲板後部を見渡す。しかし、月影の中、動くものは見当たらなかった。マーカスは全神経を集中させるが、物音、殺気も感じることはできなかった。
ーさすがに臆病風に吹かれたか?
来なきゃ来ないで良い。それこそこっちの狙い通りだ。ゆっくりと後部に追い詰めてやる・・・。
マーカスが黙って手を軽く振ると、その合図で屈強な傭兵部隊が、油断なく銃を構えながらジリジリと進み出す。
ー持久戦に持ち込んで、仲間を待つ・・・か?いや、こっちの『出港』の方が早い!
必勝の配置だ、そうマーカスは考えていた。
甲板上に累々と積まれたコンテナのせいで、見通しは悪いが、じっくりと追い詰めれば必ず勝てる・・・そう踏んでいたのだ。
不意に、前方最右部のコンテナの影から、一人の作業服姿の男が現れた。月明かりに足だけが照らされる。
バン!
発砲音がした。マーカスは慌てて制止をする。どうやら仲間のひとりがよく確認しないで撃ってしまったようだ。
「馬鹿、よく見ろ!レンだ!」
それは彼らの中のレンと呼ばれる中国籍の男だった。無事だったのか・・・と思った矢先、レンの足がふらつき、そのまま倒れた。
「撃て!」
今度こそマーカスが叫ぶ。レンの背後、コンテナの影に、動くものを見たからだ。それは、日本のニンジャよろしく黒尽くめの姿をしているかのように見えた。
マーカスの合図で一斉に仲間が銃を乱射する。銃弾がコンテナにあたり、火花が散る。その火花の中を身をかがめた黒い何かが走り抜けていく。
「くそ!何だあいつ!銃が当たらねええ!!」
素早い身のこなしで、ジグザグに走っている。予期せぬ場所で急激に方向転換をするものだから、銃の直線的な『狙い』では捉えることが困難だった。
「展開しろ!」

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