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天狐あやかし秘譚
第86章 能鷹隠爪(のうよういんそう)
あれはただ事じゃない・・・単純なホグスなんかは、大喜びだったが、俺は遠慮しとこう、などと彼が思った時、背後でバン!となにか、大きな音がした。
「なんだ!?」
音はまるで鋼鉄を思い切りハンマーでぶっ叩いたような、そんな音だった。続いて、「ぐあっ!」「ぎゃあ!」と船の後ろの方から仲間たちの悲鳴が聞こえた。
「マーカス!何してるの!?あなた達の仕事よ!」
その声を聞きつけて、【レディ】がヒステリックな声を上げた。
ーちっ!敵か・・・
今日は満月だ。こちらも闇夜に乗じることはできないが、向こうも同じだ。大勢がいる気配はないので、少数での奇襲と考えるべきだろう。
さすがに歴戦の傭兵である。こういったときの判断は早い。
マーカスは頭の中で仲間の配置を確認する。索敵のために船員を装った仲間を甲板に等間隔に配置していたはずだ。【レディ】の手下たちは、ひとつ下の船室にいる。場合によっては、そっちも戦力に加わって貰う必要がある。
おそらく敵の狙いは、人質の救出だ。だとしたら、人質を格納したコンテナを守るように仲間を集めれば、それを追ってこざるを得ないだろう。
こういうときの最悪手は、ばらばらに配置した仲間をひとりずつ殺られ、数の優位を活かせないことだ。
「おい!ギーク、ホグス!兵をこっちに集めろ。敵をあぶり出せ!」
少し離れたところにいたギークと呼ばれた大柄で短髪の男が、短く口笛を吹く。訓練された傭兵にはこれだけで十分だった。合図を受けた傭兵達が甲板の前の方に集結しだす。
「ホグス!何だ?何が来た?」
部下の中の誰よりも夜目が効くホグスを呼び、戦況を確認するが、彼も「わからねえ」と一言、言うのみだった。
「ただ、アレクとキシーラがやられたみてぇだ・・・左舷方向から入られたらしい」
「どうする?」
ギークはマーカスを見る。マーカスは雇い主であるところの【レディ】を見た。ここはまだ日本の領海内。騒ぎを起こしていいかを確認したのだが、彼女が軽く頷くのを見て、方針が決まる。
「銃を使え。敵は少数だ。手早く片付けろ!」
あと、と【レディ】に階下にいるそちらの手下に連絡を取れと伝える。
「場合によっては挟み撃ちだ・・・」
彼女はその趣旨を了解したのか、携帯電話で連絡を取り始めた。仲間たちは銃を取り出し、その内の何人かは愛用のアサルトライフルを構えていた。
「なんだ!?」
音はまるで鋼鉄を思い切りハンマーでぶっ叩いたような、そんな音だった。続いて、「ぐあっ!」「ぎゃあ!」と船の後ろの方から仲間たちの悲鳴が聞こえた。
「マーカス!何してるの!?あなた達の仕事よ!」
その声を聞きつけて、【レディ】がヒステリックな声を上げた。
ーちっ!敵か・・・
今日は満月だ。こちらも闇夜に乗じることはできないが、向こうも同じだ。大勢がいる気配はないので、少数での奇襲と考えるべきだろう。
さすがに歴戦の傭兵である。こういったときの判断は早い。
マーカスは頭の中で仲間の配置を確認する。索敵のために船員を装った仲間を甲板に等間隔に配置していたはずだ。【レディ】の手下たちは、ひとつ下の船室にいる。場合によっては、そっちも戦力に加わって貰う必要がある。
おそらく敵の狙いは、人質の救出だ。だとしたら、人質を格納したコンテナを守るように仲間を集めれば、それを追ってこざるを得ないだろう。
こういうときの最悪手は、ばらばらに配置した仲間をひとりずつ殺られ、数の優位を活かせないことだ。
「おい!ギーク、ホグス!兵をこっちに集めろ。敵をあぶり出せ!」
少し離れたところにいたギークと呼ばれた大柄で短髪の男が、短く口笛を吹く。訓練された傭兵にはこれだけで十分だった。合図を受けた傭兵達が甲板の前の方に集結しだす。
「ホグス!何だ?何が来た?」
部下の中の誰よりも夜目が効くホグスを呼び、戦況を確認するが、彼も「わからねえ」と一言、言うのみだった。
「ただ、アレクとキシーラがやられたみてぇだ・・・左舷方向から入られたらしい」
「どうする?」
ギークはマーカスを見る。マーカスは雇い主であるところの【レディ】を見た。ここはまだ日本の領海内。騒ぎを起こしていいかを確認したのだが、彼女が軽く頷くのを見て、方針が決まる。
「銃を使え。敵は少数だ。手早く片付けろ!」
あと、と【レディ】に階下にいるそちらの手下に連絡を取れと伝える。
「場合によっては挟み撃ちだ・・・」
彼女はその趣旨を了解したのか、携帯電話で連絡を取り始めた。仲間たちは銃を取り出し、その内の何人かは愛用のアサルトライフルを構えていた。

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