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第32章 ロングアイランドアイスティー



 その台詞で、思い出した。



 あの日――あの台風の夜、急いでいて、なんにも考えずに下着まで洗濯してしまったのは本当。
ドライヤーが見つからなくて焦ったのも本当。

でもだからといって、あんなガードの薄い格好で出ていったのは、私のこと女として見ない相馬に、半分当てつけのつもりだった。



相馬はしっかり動揺してくれて、怒ってくれて、でも、はじめからこういうことなんだったら相馬には申し訳ないことをしたかもしれない。



 結果的に――何事もなく朝を迎えることには、ならなかった。
なるはずがなかった。私が相馬を煽ったのだから。



 うん、相馬は優しかったよ、ずっと。相馬の家にはじめてあがったあの日から。

 自分もびしょびしょになりながら、片手で私を抱き寄せて、片手で傘を抑え込んで、もう少しだから頑張れと私の心配ばかりした。



「……優しいじゃん」

「だろ。彼氏にどう?」

「ば……」



 ばか、といつものように流しそうになって、違う、とブレーキをかける。

 冗談じゃないんだ。本気なんだ。相馬に言わせれば――ずっと。



「……ごめん」

「ほんとだよ」


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