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第30章 個室



 私は相馬の顔を見ていられなくなって顔を伏せた。

「それ、どこまでほんとなの」



「ぜんぶほんとだよ」

 相馬の声のトーンが沈む。

「俺、そんなに嘘つきだと思われてる?」



「……だって」

 三年前、と彼は言った。

「ありえないって、言ったじゃん」



「……何が?」

 その、何もわかっていなさそうな声に、あ、これ――駄目だ、泣きそう。



 ――あんな仕事人間、つまんないだけですって。可愛げもないし。



 脳内で反芻してしまって、もう何度抉ったかわからない傷がまた痛んだ。

「私は、ずっと」

 私、酔ってる。

 やだ、相馬の前で泣きたくなんてない、



「相馬が、私のことそういう目で見られないって言うから、私、ずっと、我慢してたのに」


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