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礼節の交わり
第2章    
小夜子も自分の浴衣を着ようと、あたりを見渡した。
「どうぞ、小夜子さんはそのままで……」
さっ、さっ、さっ音を立て、畳の上を障子戸へ向かう。
戸の前に立ち止まり、こちらを向き正座した。
「小夜子さん、本当にお世話になりました。どうか、お元気で……」
「わたくしこそ……水上さんも、どうぞ、お体にはお気を付けて……」
「はい」
水上は立ち上がり、戸を開け、廊下に出るとまた正座した。
一礼の後、戸が閉まり始めた。
「水上さん!」
水上の手が止まり、無言でこちらを見た。
「今度は、月の満ちる前においでください!」
水上の目が、一瞬見開いたように見えた。
だが、水上はわずかに一礼しただけで、戸を閉めた。
小夜子は今やっと裸のままで、布団の上に正座した。
月明かりで照らされた障子に映る、水上の影が見えなくなった。
どうか、ご無事で……。
小夜子は見えなくなった影に向かい、深々と一礼をした。
りーん……。
りーん、りーん……。
そのとき、小夜子の足の裏に、ぽたり、ぽたりと、温(ぬる)みを帯びた雫が滴り落ちた。
それは、自分の肌の温(ぬく)みよりも温(あたた)かかった。


完。


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