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礼節の交わり
第2章    
「小夜子さん、ありがとうございました。久しぶりに“男”に戻った気がしました。いえ、戻りました」
もう、水上は元の水上に戻っていた。
「いえ、こちらこそ……水上さんのお陰で、何か本当の“女”というものがわかった気がします。いえ……わかりました」
小夜子も戻ろうと努めた。
「実は……私はこれからすぐ、出立しなければなりません。これで、思い残すことなく日本を離れることが出来ます。本当にありがとうございました」
「え、今からですか?」
小夜子が慌てて上半身を起こす。
「はい」
「今度はどちらへ?」
「小夜子さんにも詳しくはお伝えできませんが、中東のある国とだけ言っておきます」
「どの位、いらしているのですか? 日本にはいつ戻られます?」
「わかりません。仕事が終わり次第です……一ヶ月後かもしれませんし、半年後になるかもしれません」
「そうでしたか……それについてはわたくしは何も申し上げる立場ではございません……わたくしは日本での水上さんの身の回りの世話をするだけの身……どうか、お気をつけていらして下さい」
「すみません。連絡があるまで、私の部屋はそのままにしてください」
「わかりました。ご心配要りません。それが私の仕事です」
「では……」
水上が帯を手にし、立ち上がった。
前をきちんと会わせ帯を結んだ。
もう、浴衣の前は膨らみさえも見て取れなかった。
この部屋に入ってきたときの水上に戻っていた。
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