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礼節の交わり
第1章
小夜子は寝付けないでいた。
何度も寝返りをうつ。
気がつくと、縁側に向いた障子戸の外が明るい。
今日は満月だったかしら……?
寝る前は曇っていて気付かなかったのだろう。
りーん……。
りーん、りーん……。
鈴虫の音(ね)が縁側から聞こえてくる。
胸の奥が、何故か、さわさわと落ち着かない。
“月のもの”が近づいているからかしら……?
枕元の目覚まし時計に手を伸ばそうとした時だった。
明るい障子戸に黒い人影が映った。
そして、それは静かに座った。
「夜分にすみません……小夜子さん……水上です……よろしいですか?」
戸の向こう側から、遠慮がちに抑えた男の声が聞こえた。
小夜子は布団の上に上半身を起こした。
浴衣の胸元の乱れを直してから「はい、どうぞ」と声の主に向かって声を掛けた。
戸が静かに半分ほど開く。
月明かり中、廊下に横向きに正座をした、水上の姿があった。
水上も浴衣を着ていた。
水上は今年、五十歳を超えたばかりだと小夜子は聞いていた。
「小夜子さん、夜分申し訳ありません。眠れなかったものですから……今日はそのつもりでなかったのですが……もし差し支えなければ、今からでもよろしいでしょうか……?」
小夜子は三十二歳だ。
小夜子の方がはるかに年下なのだが、水上は小夜子にはいつも敬語で話す。
「そうでしたか……実はわたくしも眠れなくているところでした……ですからお気になさらずに……どうぞ中へ……」
「では、失礼いたします……」
水上は立ち上がり、部屋に入ると、また正座をして襖を閉めた。
何度も寝返りをうつ。
気がつくと、縁側に向いた障子戸の外が明るい。
今日は満月だったかしら……?
寝る前は曇っていて気付かなかったのだろう。
りーん……。
りーん、りーん……。
鈴虫の音(ね)が縁側から聞こえてくる。
胸の奥が、何故か、さわさわと落ち着かない。
“月のもの”が近づいているからかしら……?
枕元の目覚まし時計に手を伸ばそうとした時だった。
明るい障子戸に黒い人影が映った。
そして、それは静かに座った。
「夜分にすみません……小夜子さん……水上です……よろしいですか?」
戸の向こう側から、遠慮がちに抑えた男の声が聞こえた。
小夜子は布団の上に上半身を起こした。
浴衣の胸元の乱れを直してから「はい、どうぞ」と声の主に向かって声を掛けた。
戸が静かに半分ほど開く。
月明かり中、廊下に横向きに正座をした、水上の姿があった。
水上も浴衣を着ていた。
水上は今年、五十歳を超えたばかりだと小夜子は聞いていた。
「小夜子さん、夜分申し訳ありません。眠れなかったものですから……今日はそのつもりでなかったのですが……もし差し支えなければ、今からでもよろしいでしょうか……?」
小夜子は三十二歳だ。
小夜子の方がはるかに年下なのだが、水上は小夜子にはいつも敬語で話す。
「そうでしたか……実はわたくしも眠れなくているところでした……ですからお気になさらずに……どうぞ中へ……」
「では、失礼いたします……」
水上は立ち上がり、部屋に入ると、また正座をして襖を閉めた。

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