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想い人
第2章 私の想い人
「あのっ…手、離して?」
透也に掴まれたままの腕。

マスカラの液が乾いちゃうよっ。

「……やだ」

「とっ、透也⁈ 」

不意に伸ばされた透也の手。
ゴシゴシと、たっぷりと塗られたアイメイクを落としていく。


わわわわわっ⁉︎

「なっ、何すんの⁈ 」

バシバシと透也の手を叩きながら、顔を横に振る。

グイッ
掴まれていた手が捻り上げられた。


「似合わないんだよ‼︎ 」

透也からの睨むような視線。


痛い─────

掴まれた手が痛い。

でも、それよりもずっと心が痛いよ……。


「……どうせ童顔のガキですよぉだ」

私がどんなに頑張ったって、どうせ蕾さんの足元にもおよびませんよぉだ。

悲しくて涙が溢れ出す。

「そういう意味じゃなくて……」

泣き出した私。透也はオロオロとしながら掴んでいた手を離した。

「トイレで化粧落としてきます」

彩華先輩にそう言って、私はトイレへと走った。


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