パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第21章 もつれるストッキング5　　　美冴

　8　ひがみ…

　これら四人に結ばれている共通の流れは全て、わたしにとっての…
　嫉妬、憧憬、因果…という流れに繋がると解ってしまったのだ。

「さぁ、美冴さん帰りまさしょう」
　その穏やかな健太の声で、このわたしの逡巡という、自意識の海に沈み、思考していた自我が、ハッと、現実に浮上した…

「え、あ、う、うん…」
　わたしは慌てて、そう虚ろげに返事をすると…

「なんか、疲れてますねぇ…」
　そう健太は微笑みながら労ってくる。

「え、いや、そんな…」
　そしてわたしは、慌てて周りを一瞥し…
　この自意識に深く沈み、逡巡していた思考は、ほんの一瞬の間だったのだと気づいた。

　すると…
「ほら、美冴さんは疲れてるんだからぁ、健太、ちゃんと気遣いなさいよね」
　と、そんなわたしたちを見ていたゆかりさんがそう少し、揶揄い気味に声を掛け…

「あっそうだ、明日の決起集会の段取りはバッチリなんでしょう？」
　と、続けて健太に問いかける。

「はいっ、もちろんバッチリっすよ」
「うん、そう、よかったわ」
「はい、任せてくださいっ」
　そんな、和やかな会話を交わす。

　だが、その時…
　そんなゆかりさんと健太のなんてことのない和やかな会話を見ていて…
『あっ…』
　わたしの胸が急に、ドキンっ、と、強く高鳴り、ザワザワと騒めいてきた。

　いや違う…
　騒めきと共に、強烈な違和感を感じてきたのである。

　違和感…
　その違和感とは…急に心に浮かんだある想い…

　それは…
　わたしは…ゆかりさんに対して……
　嫉妬ではなく………

『ひがみ』
　そうそれは、嫉妬ではなく、憧憬ではなく、因果でもなく…
『ひがみ』という感情を感じていたのだ。

『ひがみ』それは…
　自分の劣等感のあらわれ…
　ゆかりさんに対する劣等感。

　そしてゆかりさんが『羨ましい』という想いの…裏側。

　武石健太の憧れの対象…
　大原浩一という、秘めた想いのオトコの恋人であるという羨望…
　その彼を奪ったどあろう松下秘書の魅惑さに対する劣等感…
　そして…
　本当は、わたしだけのはずだったビアンの想いからの伊藤敦子への嫉妬…

　全てが『佐々木ゆかり』というオンナを巡るこの流れに…
　『ひがみ』と『羨ましい』という想いの感情が当てはまる。

　あっ、いや、違う…全部だ。