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シャイニーストッキング
第12章 絡まるストッキング6      和哉と美冴2
 88 お互いの着信

「出ないの…」
 美冴さんは僕に電話に出る様に促してきた。

 真実からの着信であるのはバレバレであった…

 なぜにこのタイミングでの着信なのか…

 まるで探知機でも付けているかの様なタイミングである…
 その事にもなんとなく不思議に、いや、不惑な思いを感じてしまう。



 ブー、ブー、ブー、ブー…

「あっ…」
 すると今度は、美冴さんの携帯電話の着信バイブが響き、震えてきたのだ。

 美冴さんは自分の電話をバッグから取り出す。
 時間は午後11時を過ぎたところである。

 多分、真実もそうなのであろうが、美冴さんの電話の相手もおそらく11時という時間の区切りで電話を掛けてきたのであろう…

「あらっ…」

 すると美冴さんは携帯電話を手に取り、その着信のディスプレイを確認するとそんな声を漏らしてきた。

 うん、彼氏からなのか…
 そんな美冴さんの漏らした声のトーンで一瞬、そう思ったのだ。

 一瞬にして心がザワザワと騒めいてしまう、そして
 ああ、終わった…
 と、焦燥感も湧いてきていた。

 すると美冴さんは携帯電話を手にして玄関の方へ向かい、そしてリビングとキッチンの仕切りのドアを閉じた。
 僕のこのアパートの部屋は六畳一間のワンルームであるから狭い、お互いの会話が聞こえてしまう。

「もしもし…」
 美冴さんの声が、仕切りドアの向こう側から僅かだが聞こえてきていた。

「はい、ゆかりさんこんばんは、どうしました?」

 ん?、電話の相手は女性なのか…

 確か、ゆかり…って聞こえたよな…
 なんとなくなのだが、少しだけホッとした。

 そして僕もいつまでも『夢の国』のテーマソングの着信メロディを鳴らしている訳にもいかず、切れるまで無視する訳にもいかない、それに例え切れてもまた掛かってくると思い、仕方なく電話に出る…

「もしもし…」

『あ、ごめんなさい、わたしです…真実です…』



 
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