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シャイニーストッキング
第12章 絡まるストッキング6      和哉と美冴2
 44 甘々なわたし

 間違いない、あの和哉の目はオスの、男の、欲情した目に間違いない…
 わたしは鏡に写る自分に自問自答をする。

 精一杯に、より綺麗に、よりお洒落に着飾り、それが逆に裏目に出て失敗だったか…

 まだ大学生の22歳の少年とも青年ともいえる、まだまだ青春真っ只中の曖昧な存在であり、大人の男への成長過程の和哉と、既に37歳になり、中年、熟女という世代に入っている社会人としての大人の女のわたしとの差を、いや、格差を見せつけようと精一杯に着飾ってきたのだが。

 もう貴方とは釣り合わないのよ…

 あの五年前とは違うのよ…
 そういう意味を込めて着飾ってきたのだが、それが裏目に出てしまったのか。

 しかし今夜、対面した当初は聡明な和哉にはそんなわたしの想いのアピールが伝わったようで、かなり、動揺し、落ち着かない様子にはなっていた。
 そしてわたしの狙いが成功した筈だと思っていたのだ。

 だが、わたしはその様子に安心してしまったようだ…
 確実に今の、さっきの和哉の様子は、さっき迄のあのオドオドしていた彼の目とは変わったのである。

 間違いない、和哉の心情がオスの、男の欲情に、わたしを欲する想いへと豹変したのだ…

「どうしようか…」
 わたしは鏡の中の自分に問い掛ける。

 美冴、そもそもアナタは今夜どういうつもりで和哉と再会を、いや、昨夜の彼の誘いを受けたのか?…
 と、鏡の中のわたしが訊いてくる。

 考えが甘かったんじゃないのか…

 五年間もわたしを追い続けてきていたんだぞ、こんなレストランで話しただけで終われる筈がないじゃないか…

 和哉の想いの重さはそんな簡単な重さではないこと位分かっていたくせに…

 誰だってそう簡単には本音なんか漏らさない、だから下心っていうことくらいわかっている筈なのに…

 アナタは甘い、いい歳して甘々なのよ…
 鏡の中のわたし自身がそう詰めてくる。

 どうしようか…

 そもそもわたしは昔の男、元彼と再会して会う、話す等の経験をしたことがなかった。
 しかし小説や、ドラマ、映画等ではそんな展開のストーリーを何度となく読んだり見たりはしていたのだ。

 そしてそれらの殆どのストーリーが、『焼けぼっくいに火…』的な展開で、劇的な再会に盛り上がったり、また、よりを戻す的なのも知っていたのである…




 
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