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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
本格的に冬を迎える頃だった。
別件で事務所を出る用事があり、ついでという体(てい)で桃華がいる現場に寄った。本当は、用事がある場所とたいして近くもなかった。
古い校舎があった場所には、すでに新しい校舎が建ち始めていた。
「最近、休みはよく香椎さんちに行ってるんだってな」
「え……ええ!?」
そんな校舎を眺めていた秋広に、たばこ休憩目的で出てきた相澤が唐突に尋ねてくる。
秋広はなぜか、ひどく狼狽(うろた)えた。
「飯、作ってやってんだろ?」
「いや、た、たまにだよ……っ、ほんとに」
つい目が泳ぐ。顔が火照っていくのが自分でもわかった。
桃華が入社した頃の相澤の言葉が蘇る。自分は桃華の眼中にもない。釣り合わない。
相澤は特に悪気なく、そんなふうに言った。秋広自身そう思っていたし、そんなのは当然のことすぎて、疑問や異論を持つこともなかった。
桃華の美しい容姿は、それ一つだけで、すでに特別だったから。
だからこそ、頻繁に家に出入りしている現状を職場の人間に知られてしまっている今の状況が気恥ずかしく、居たたまれない。
「やっぱ胃袋掴むって、大事だよなあ」
「……え?」
妙に納得した様子で一言だけ。一瞬からかわれたのかと思い相澤を振り向いたが、真面目そうな顔だった。
秋広の脳裏にはハテナマークが浮かぶ。
「じゃ、お疲れー」
たばこを吸い終わると片手をあげ、現場へと戻っていく。
「あ、ていうか、休みの日に桃華さんちに行ってること、誰に……」
「は? そんなん、本人に決まってんじゃん」
「ええ!?」
今度こそ相澤は去っていった。

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