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小夜
第5章 あめがふる
雨が降っています。
今夜はお兄さまはいません。
お兄さまは、この国の経済を動かす人々が集まるパーティーに出かけています。

この部屋に小夜はひとりです。

小夜の暮らす離れには、外から鍵が掛けられています。
玄関も、窓も、明かり取りの天窓にも。
小夜は自分から外に出ることができません。

不便はありません。
この離れには小夜が14才になった頃、ユニットバスや小さなキッチンが増設されました。

だから小夜は、ひとりでここに閉じ込められていても、普通に暮らせます。


……まるで世界から切り離されたようなこの部屋で、
小夜は雨の音を聞いています。

衣服をつけることを許されない肌に、ひんやりとした闇が沁みこんできます……
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