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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

地響きのような響めきと声が上がる。
大広間は徳子が打ち明けた余りにも信じ難い事実の恐ろしさに支配され、誰もが混乱したように礼儀を忘れ、騒めいた。
「…まさか…大お祖母様…」
紗耶が掠れる声で尋ねた。
「そう…。
この短剣で殺したのですよ。
あっけなかったわ。
たった一突きで、まるでビヤ樽みたいな大男が崩れ落ち、亡くなってしまったのですもの…」
騒めきはぴたりと止んだ。
誰も彼もが固唾を飲み、徳子を見守った。
「…けれど私は少しも後悔していませんよ。
この短剣で御前をお守りできたのですもの。
誇らしいくらいだわ。
この短剣の本懐を遂げさせてやれたのです。
私は満足していますよ」
唄うように愉しげに言いながら、煌めく刃を紗耶の喉元に突きつける。
「大お祖母様!どうか!」
紫織が悲鳴を上げ、紗耶の前に駆け寄ろうとする。
「動くなと言ったはずですよ!
貴女が1ミリでも動いたら、貴女の愛おしい娘の命は終わるのです」
ぴしゃりと冷たい声が飛ぶ。
「大お祖母様!
どうか落ち着いてください」
政彦が紫織を羽交いじめにしながら訴える。
「私は至極落ち着いていますよ。
これ以上ないほどにね」
徳子はにっこりと笑った。
…紗耶さん…
と、甘く優しく囁いた。
「…私はね。千晴さんが可愛いの。
可愛い可愛い私の孫の貌に泥を塗った貴女を許すことはできないの。
高遠本家の御台所となるべき娘が、他の男に懸想しているなんて、あってはならないことなの。
…そんなスキャンダルは静かに闇に葬らなくてはならないの」
…つまり…
と、紗耶は震える声を絞り出す。
「…大お祖母様は…私を殺されると…仰るのですか…」
大広間は徳子が打ち明けた余りにも信じ難い事実の恐ろしさに支配され、誰もが混乱したように礼儀を忘れ、騒めいた。
「…まさか…大お祖母様…」
紗耶が掠れる声で尋ねた。
「そう…。
この短剣で殺したのですよ。
あっけなかったわ。
たった一突きで、まるでビヤ樽みたいな大男が崩れ落ち、亡くなってしまったのですもの…」
騒めきはぴたりと止んだ。
誰も彼もが固唾を飲み、徳子を見守った。
「…けれど私は少しも後悔していませんよ。
この短剣で御前をお守りできたのですもの。
誇らしいくらいだわ。
この短剣の本懐を遂げさせてやれたのです。
私は満足していますよ」
唄うように愉しげに言いながら、煌めく刃を紗耶の喉元に突きつける。
「大お祖母様!どうか!」
紫織が悲鳴を上げ、紗耶の前に駆け寄ろうとする。
「動くなと言ったはずですよ!
貴女が1ミリでも動いたら、貴女の愛おしい娘の命は終わるのです」
ぴしゃりと冷たい声が飛ぶ。
「大お祖母様!
どうか落ち着いてください」
政彦が紫織を羽交いじめにしながら訴える。
「私は至極落ち着いていますよ。
これ以上ないほどにね」
徳子はにっこりと笑った。
…紗耶さん…
と、甘く優しく囁いた。
「…私はね。千晴さんが可愛いの。
可愛い可愛い私の孫の貌に泥を塗った貴女を許すことはできないの。
高遠本家の御台所となるべき娘が、他の男に懸想しているなんて、あってはならないことなの。
…そんなスキャンダルは静かに闇に葬らなくてはならないの」
…つまり…
と、紗耶は震える声を絞り出す。
「…大お祖母様は…私を殺されると…仰るのですか…」

